第173回 中村喜久蔵コレクション
 

染色家が最高峰の技術を駆使した東京友禅
非売品だった作品の展示即売を決断

新年あけましておめでとうございます。本年が皆様方にとりまして素晴らしい一年であります様、心からお祈り申し上げます。

東京友禅・江戸小紋 コレクション130点

このコラムで以前お伝えした様に、先代社長で父の中村喜久蔵は平成24年10月に他界した。満86才だったので男性とすれば天寿をまっとうしてくれたと思う。 

昭和36年に京都から東京に本社を移転し、現在の東京山喜を設立。以来、喜久蔵は東京友禅に惚れ込み東京友禅のメーカー卸としてのリーディングカンパニーを目指して、昭和44年から29年間、毎年1回中村喜久蔵展を開催し続け、この催事が会社の発展をリードしてきたのである。 

平成5年に私に社長の座を譲り会長になり、平成9年に取締役会長の職も辞した。それからは、長年お世話になった東京友禅と江戸小紋のコレクションを個人として始めた。

商品ではなく工芸品を創る

喜久蔵は会長を辞した時の退職金を、全て御恩頂いた東京友禅と江戸小紋の業界に恩返しをしたいと考え、平成9年〜16年までにコレクションを完成させたのである。

この内容は、喜久蔵が60数名の染色工芸家の方々に、自身最高峰の技を駆使して着物を染めて頂いたものである。多くの場合は喜久蔵自ら図案を描き、色出しをした。また、染め代も納期もおまかせで、じっくりと良い作品を創ってもらった。 

現役時代は小売店に仕入れてもらう為の価格を考え、売れる商品創りに集中していたが、このコレクションは売る事をまったく考えず、商品というよりは工芸作品創りに集中した。 

喜久蔵の思いは、東京という最大の消費地に、実は江戸時代から伝わる素晴らしい伝統工芸・東京友禅と江戸小紋がある事を、多くの方に知ってもらい、後世へ伝えていきたいと言うものであったと思う。

このコレクションを平成16年に図録にまとめ、さらに東京国際フォーラムで展示発表した。この図録作成にあたり、私は父・喜久蔵が最も尊敬していた日本画家の平山邦夫氏に見て頂く事にした。お陰様で、図録には平山邦夫画伯からの推薦文を頂いた。

東京国際フォーラムでの展示発表会は、創業80周年記念祭と併催した。喜久蔵コレクションは展示だけで、非売にしたが、2日間で6000余名のお客様に来場頂き、多くのメディアにも取り上げて頂いた。父・喜久蔵も、コレクション発表として最高の舞台に恵まれ、とても喜んでくれていた。

着てもらう事で本来の美しさ発揮

その後このコレクションは、喜久蔵の自宅で保管していたのだが、他界を機会にこれを会社で購入し、その後は会社で保管していた。しかし昨年12月、池袋東武百貨店での「たんす屋祭り」で、このコレクションを展示即売する決断をした。
 
これは、かつて喜久蔵が『着物は女性に着てもらって、初めてその本来の美しさを発揮する事が出来る』と常々言っていたのを思い出し、やはり、これらの着物や帯を好きと思って頂ける女性に着てもらおうと考えたからである。

12月18日〜24日の7日間、池袋東武百貨店の8階催事場300坪を使った「たんす屋祭り」のメインイベントに、この中村喜久蔵コレクションの展示即売会を位置づけた。また20日土曜日には、午後1時と3時からの2回、私と東京友禅界の第一人者である小倉貞右氏とトークショーをさせて頂いた。お陰で多くのお客様に催事場へ足を運んで頂いた。 

喜久蔵コレクションの着物や帯は、十数万円から百数十万円と高額で、さらに未仕立てであるから、たんす屋のお客様に買って頂けるのか、多少の不安があった。 

しかし結果、20余点のお買上げがあり、「たんす屋祭り」の売上増に大きな貢献をしてくれた。また、複数の百貨店バイヤーの方々も見に来て頂き、本年の催事のメインに取り上げて頂く事も内定した。

売上以外に得た2つの収穫

私は今回の展示即売会で、売上以外にも大きな収穫があったと実感した。
 
ひとつ目は、たんす屋を立ち上げ、呉服問屋業に見切りをつけて15年以上が経過すると、社員の9割が弊社が呉服問屋であった時代を知らない。そして、会社に来ることがなくなって7年以上が経過すると、先代社長・中村喜久蔵の事を社員の6割が知らない。喜久蔵コレクション展示即売会は、弊社の社員各々に会社のルーツと先代社長・中村喜久蔵の事をしっかり認識し、学ぶ事に大きく役立ったと実感した。

ふたつ目は、たんす屋のお客様にたんす屋のルーツを知って頂くと同時に、京友禅、加賀友禅と並び、東京も素晴らしい友禅産地である事を知って頂けたのではないだろうか。 

更には、かつて江戸時代に武士の裃の柄を染める技法であった江戸小紋が、現在も着物の染色工芸品として東京に伝えられている事もお伝えできたと思う。また、喜久蔵もこのふたつの収穫を喜んでくれていると確信している。

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