着物を活用して温泉街を活性化
日本旅館で女将から着付け習う

 3月6日の日経ビジネスオンラインに、たんす屋の記事が4ページにわたり掲載された。2月に取材を受けていたが、その事実も忘れていた。
 その後、かつて私の2冊目の著書「着るだけで幸せになる」を企画して頂いたサモアの下平さんから久しぶりにご連絡を頂いた。用件は下諏訪の温泉旅館、ぎん月の若女将・武居智子さんをご紹介したいとの事だった。そして4月1日に、下平さんが武居智子さんと本社にお越しになりお会いしたのである。その折に武居さんから日経ビジネスの記事に大変共鳴したと言われ、ようやくその事に気が付いたのである。
 記事のタイトルは、『40兆円の眠れる資産「キモノ」を観光資源に-爆買いはいずれ下火、文化体験でリピーター呼ぶ』と言うものだった。間違いなく私が受けた取材を基に書かれた記事であるが、その中で最も強調されていた部分は、箪笥に眠る膨大な資産「キモノ」がローカルに於いてインバウンドを取り込む有効なツールになりえると言う部分であった。
 この記事に敏感に共鳴されたのが、下諏訪の温泉旅館ぎん月の武居さんだった。私は着物の潜在需要を顕在化する為に、ありとあらゆる施策を試行錯誤する中で、1つの仮説を自分の中に構築しっっあった。期せずして、日経ビジネスオンラインの取材の最後にそのアイデアを話した。

温泉旅館で着物免許皆伝

 その内容は、着物にまつわる多くの面倒の中で最強にして最大の問題、「一人で着物が着られない」問題の解消に、日本の伝統的旅館が大いに役立つのでは?と言うものであった。さらにこの施策が上手く稼動すれば、国内のお客様に限らず海外のお客様にも強力な訴求力があるのではないでしょうか、と言うものであった。
 具体的には、歴史と文化のコンテンツを豊富に持つローカルな観光地の日本旅館に、たんす屋の着物と帯をご提供させて頂く。そこには畳の部屋があり、毎日着物で仕事をこなす女将がおられ、着物の似合う町並みがあり、日常から開放された女性客がおられる。
 これほど着物の着付けを習うのに優れたインフラは他に無いだろう。一泊なら浴衣と半幅帯、二泊なら名古屋帯、三泊なら袋帯。こんな感じで女将から直々に着付けを教わり、三泊で着物免許皆伝となれば楽しいだろう。
 この様な私の思いに共鳴をされたぎん月の若女将の行動力はとても頼もしいもので、地元の商工会議所、観光協会、旅館組合を巻き込んで具体化の為のミーティングが過日開かれ、私も参加させて頂いた。先ずは小さく生んで修正を加え、大きく育てようと言う事でまとまり、8月にはモニターツアーを募集する運びとなった。
 下諏訪温泉は、中山道六十九次の中で唯一温泉の出る宿場町で、更に甲州街道の終点と重なりかつては大変栄えた宿場町だった。明治以降は隣接する岡谷が長野県の養蚕の中心地であり、下諏訪も養蚕と製糸で大いに賑わった歴史がある。今も諏訪大社の御柱祭は有名で、全国から非常に多くのお客が訪れ、予約でどこの旅館も満室になるという。しかし、このお祭りが7年に一度の為御柱祭を除けば、往時の賑わいは今は無いそうである。
 そこで下諏訪の再活性企画に着物を活用する事は、繭と生糸の一大産地であった歴史を鑑みてもふさわしかろうと言う事で、地域の行政も巻き込み、SKP(下諏訪きものプロジェクト)が誕生した。モニター募集の企画書は武居さんを中心に進捗中であるが、たんす屋も着物と帯の提供に留まらず、全方位で協力していく所存である。具体的には二つの方向だ。

かつては宿場町だった情緒漂う下諏訪温泉 本陣

人気ブロガーをモニターに

 1つ目は、モニター募集の企画がかたまり次第、たんす屋のHP と首都圏、中部のたんす屋約80店舗の店頭でモニター募集のボスターを貼り、フライヤーを手配りしようと計画している。現在海外のお客様にも訴求する為に、英語、中国語バージョンも作成予定だ。たんす屋の店頭で着物が着られないお客様には、このSKPは温泉旅行と合宿スタイルの着付け教室が一体化した魅力的な企画になると確信している。
 2つ目は、インバウンドに強い企業と連携し、人気ブロガーのモニター化を模索している。彼らのブログはツーリストに多大な影響力がある。下諏訪で出雲大社と並び日本最古の歴史がある諏訪大社と、中山道唯一の温泉街で日本旅館の女将のハートフルな着物レクチャーは、きっとお客のハートを鷲掴みする事だろう。
 今回のSKPは、私が着物の潜在需要は無尽蔵と言う仮説に基づいて考えた施策を、記事にして頂いた日経ビジネスの記者さんがおられ、その記事に強く共鳴された下諏訪の温泉旅館の武居智子さんがおられ、彼女の提案に賛同した地域の多くの方々がおられ、これらの動きに我が意を得たり、と思う自分がいて初めて動き出したプロジェクトである。
 SKPは、たんす屋の売上向上に決して即効性のある物ではない。しかし、小さな成功が日本中に飛び火した時、必ず日本人にも海外のお客様にも、目本の歴史と文化の素晴らしさを着物を纏う事を通して体感頂けると確信しているが、いかがだろうか。

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