第133回 売り方を変えて売りつくす
 

売り方次第で喪服が5千~1万円で売れる!
中央大学学生が卒業式用に黒紋付と袴を提案

値下げではコストがとれない

ご家庭から買い取って、または引き取ってくる着物や帯の中で、なかなか売れない物がある。その代表選手が、喪服、黒共帯(喪服用の帯)、羽織である。
 
売れない商品を売れるようにする最も容易な方法は、値下げである。5千円で売れなければ3千円、それでも駄目ならば1000円にする。
 
最終的には詰め放題一万円に投入する。
 
これは、百貨店の集客イベントでよくやる企画で、通常2点程度入れられる袋を用意するが、中には5点以上詰め込むお客様もおられ、1点あたりの売価は600円から700円になる。 
 
ここまで値下げすれば、売れない物もすべて消化されるが、この価格では丸洗い、殺菌、抗菌、消臭加工のコストを取り戻せない。これらのアイテムが売れにくい原因は、消費者の生活習慣の変化ではないだろうか。
 

喪服・羽織が売れない理由

かつて今から15年、20年以前は、嫁入りのお支度に欠かせないナンバー1は、喪服であったのではなかろうか。結婚してから嫁ぎ先のご両親が入院され、容態が思わしくないからと言って喪服を誂えに呉服屋さんに走るようでは、嫁の恥と思われていた。
 
しかし昨今では、身内の女性が喪服を着ることが必須ではなくなったし、いざとなれは葬儀場がリーズナブルな価格でレンタルし、着付けもしてくれる。 
 
こうなると一生で、着用機会が限られる喪服をあらかじめ購入する必要性が無くなってくる。
 
次に羽織である。かつては、やはり着物を着るときに羽織は必須アイテムであった。特に色無地の着物に黒の羽織は、PTAルックと呼ばれ、入学式、卒業式のお母様には欠かせないアイテムであった。
 
しかし、着物がフォーマルシーンの中心になってくると、袋帯を締め、上には道行コートが一般的なスタイリングと変化した。PTAルックは完全に全滅したのだ。
 
近年、羽織が復活する兆しはあるが、長羽織がトレンドなので、従来の羽織は3千円でもなかなか売れない。黒の羽織にいたっては、1000円でも容易に売れない。
 

喪服をバラして売るアイデア

さて、リサイクル業の妙味は、そのままでは売れない、又は売りづらい物をひと工夫加えることで、再度売れるようにすることではなかろうか。
 
先ずは喪服に注目した。実はこのアイテムは正確に言えば黒紋付であり、本来は、ブラックフォーマル着物である。
 
男性の黒のダブルのスーツと同じで、ブラックフォーマルであるから、黒のネクタイをした時に葬式に参列する喪になり、白のネクタイにすれは、結婚式に参加する晴れ着になる訳である。
 
つまり、女性が黒紋付で黒共帯を締めて、帯締め、帯揚げ、草履を黒で統一した時、初めて喪服になるのである。これを売り方を変えることで、売れるようにする計画をしている。学生達もアイデアを出してくれた。
 

大学の生協で袴を販売

91日から、原宿店が「Tokyo135°」、「Kimono+」のダブルネームになった。
 
Kimono+」は現在、中央大学商学部の秋澤ゼミの3年生4人で立ち上げたレーベルである。今から6年前に「Tokyo135°」を立ち上げたメンバーの後輩達にあたる。
 
彼女らの企画の一つに、中央大学の生協の中で、卒業式用の袴の販売を企画している。
 
彼女らが目指すものは従来のレンタルでは実現出来ないオリジナルなスタイリングだ。その中の一つが、卒業袴のブームを起こしたルーツ、宝塚の卒業式である。
 
宝塚の卒業式のスタイルは、今でも黒紋付に緑の無地袴だ。このコーディネイトはシンプルにして格調高く、フォーマル度も抜群である。
 
このように売り方の変更をする事で質の高い黒紋付は、充分、5千円から1万円で売れると考えている。
 
また、夏物の絽の喪服は、紋の部分を大胆にシースルーにして、夏のおしゃれ着物に作り変える事を計画している。
 
次に黒共帯だが、これにはシミや黄変が多く、丸洗いをしても1000円以上で売れない着物の、きれいな部分をパッチワークして、黒地の名古屋帯を作る事を考えている。
 

売れにくい羽織が人気の名古屋帯に

さて年間26千点もの数量を買い取り、又は引き取りをしてくる羽織だが、色々と工夫した結果、一枚の羽織から一本の名古屋帯の付け帯を創る事に成功した。
 
名古屋帯は羽織と逆に、たんす屋の一番の人気アイテムである。
 
しかし、羽織から帯をつくるには具体的には帯芯代と羽織を解いて、つけ帯に変更する加工代金がかかる。 
 
黒紋付のように、売り方を変えるやり方は、新たなコストが発生しないので、売れない時のリスクは大きくない。
 
一方、形を変えるには新たなコストが発生する。現在コストは3千円以上。1万円以上で売れないとリスクを犯すメリットがないのである。
 
将来的にはこのコストを、海外で大量に加工する事で半分以下にし、着物デビューセットの帯に投入出来るようにしたいと考えている。 
 
これが可能になれば、年間2万点程度の売れ筋名古屋帯を、売れづらい羽織から生産できると目論んでいる。
 

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