第210回 和服と漢服
 

和服を研究して漢服ブランド設立
中国人学生の発想に驚きと喜び

着物の呼称は色々ある。「KIMONO」は相当な国際語で、欧米では「SUSHI」や「TOUFU」に並ぶ認知度である。
 
私は永らく基本的に「きもの」とひらがなを使ってきたが、3年前から「着物」と漢字に変えた。理由はネット上の検索で圧倒的に「着物」が一位である事を知ったからだが、実際に「着物」に変えてみると、メリットは他にもあった。
 
一つは、「着物」は前後の文字とかぶるリスクがない。ひらがなは前後のひらがなとかぶって、読み間違えるリスクがある。更に「着物」は二文字で三文字の「きもの」より短い事もメリットだ。
 

呉服・和装・和服多彩な表現方法

しかし、弊社が問屋をしていた19年前は、着物を表現するのに必ず「呉服」と言う言葉を使っていた。つまり、東京山喜は「呉服問屋」であり、決して「着物問屋」ではなかったのである。
 
一方、2015年に経済産業省が立ち上げた着物業界活性化の為の協議会は「和装振興協議会」である。更に昨年10月、上海の二つの大学で着物文化講座をさせて頂いたが、中国語で着物を表現する場合は間違いなく「和服」である。
 
「きもの・着物・KIMONO・呉服・和装・和服」と様々な表現があるが、「きもの」「KIMONO」「着物」は当然ながら文字の違いで同じ物を意味し、限りなく和服に近いと思われる。
 
一方「呉服」は多くの場合、絹織物の小幅の反物を意味する場合が多いようだ。呉服は文字通り呉の国から来た服である。呉は三国志の魏・蜀・呉の呉の国で、その都は現在の江蘇省蘇州市の近くだそうだ。その一帯は今も養蚕が盛んで、古くから絹織物の著名な産地である。
 
また「和装」は、着物を着た装い全般を総称している感じである。着物、帯に限定せず、インナーや着物を着る時に使う小物やコート、履物も全て含めて和装で包括できる。
 

中国の若者間で漢服ブーム

そして「和服」と言う言葉に対して「漢服」を初めて意識したのは、昨年上海の大学で中国人学生さん達と交流した時である。最近中国の若者の間で、コスプレ的に漢服がブームになりつつあると聞いた。その場で漢服をネット検索すると、中国の時代劇でよく見かけるコスチュームで襟合わせ、袖、帯など、着物との共通点が多く見受けられた。この漢服の服飾文化が飛鳥時代の日本に伝わり、着物のルーツになった事は想像に難くない。
 
漢服を意識し出したこのタイミングで、私が理事をさせて頂いている「一般財団法人アジア・ユーラシア総合研究所」の代表・川西重忠先生から、SBI大学院の中国人学生、李佳倩(リ・カセン)さんを紹介して頂いた。李さんは(株)アイデアスプラウトという京都のベンチャー企業で働きながらMBAコースで研究をされているが、そのテーマが「漢服の復興」だという。李さんは上司の春山社長と二人で同研究所に来られた。
 
李さんの目標は漢服を研究して、中国人に止まらず、世界に受け入れられる新たな漢服をファッションとして復活させることだという。しかし、漢服の資料は中国にはほとんど残っていないそうである。理由の一つとしては、17世紀半ばから250年近く中国を支配した清朝が満州族の王朝だったため辮髪や纏足、旗袍などの満州族の風俗を普及する一方、漢民族や他民族の服飾を禁じたこと。それに加え、清朝末期には洋服の着用が普及したため、漢服文化が途絶して350年にもなってしまったのである。
 
李さん曰く、中国で消滅してしまった漢服をルーツに持つ和服を研究することで、現代に通用する漢服をAI(人工知能)を活用して新たな日中に通用するブランドの立ち上げをMBA取得後に事業化したいという。
 
この様な発想が中国人から生まれたことに、驚きと感銘と深い喜びを感じた。1989年からたんす屋を立ち上げる10年間、中国で着物などの工場経営をしていた私は、当然ながら素材としての生糸と絹織物のコストが非常に安く、工場で働く人の人件費が当時の日本と比較にならない安さである事で、生産拠点として中国に魅力を感じていた。
 
しかし約20年のブランクを経て、中国のGNPは日本の2倍をはるかに超え、今は巨大な消費市場として目の前に出現したことをまざまざと感じ取れる。そのきっかけを、漢服の研究と新ブランド確立という李さんの計画が与えてくれた。
 
着物市場がピークの2兆円から、43年連続して右肩下がりを続け、2800億円に凋落し、出口が見えない様に感じられる今、たんす屋は、日本文化発信型着物屋を目指すことで、着物市場のダントツのリーディングカンパニーを目指している。しかし漢服との出会いと消費市場としての中国の発見が、無限の潜在需要を掘り当てる予感を与えてくれた。
 
この新ブランドの立ち上げに、日本の家庭に眠る「箪笥の肥やし」4億点の着物と、4億点の帯が大いに役立つと感じているが、いかがだろうか。
 

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