リユース着物 たんす屋

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2025年08月20日

着物を彩る日本の伝統色|四季の色と意味をわかりやすく解説

伝統色の着物と茶道

「色を知れば、着物の装いに物語が宿る」
 四季や自然と結びついた日本の伝統色の意味を知ることで、着物のコーディネートに深みとメッセージが加わり、単なる「服」ではなく「表現」となります。

「紅は生命、藍は誠実。色が語る日本の美。」
それぞれの色が持つ象徴的な意味を理解することで、着物がより雄弁に美意識を語り出し、着る人の心を映し出します。

「ただ美しいだけじゃない、色には心がある。」
ただ美しいだけでなく、色に込められた心や背景を知ることで、着物に対する理解が深まり、選ぶ楽しさや着る喜びが倍増します。

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目次

1. はじめに
1−1. 日本の伝統色とは
1−2. 着物と色彩の深い関係  
1−3. 自然や四季との結びつき#6-2
2.日本の伝統色の特徴  
2−1.四季折々の自然を映す色  
2−2.侘び寂び(わびさび)の美意識  
2−3.西洋の色彩感覚との違い
3.代表的な伝統色とその意味  
3−1.紅色(べにいろ):生命力や華やかさの象徴  
3−2.藍色(あいいろ):清潔・誠実を表す色  
3−3.萌黄色(もえぎいろ):新緑を思わせる若々しさ  
3−4.桜色(さくらいろ):はかなさと優しさ  
3−5. 墨色(すみいろ):落ち着きや静けさ
4.着物における色の役割  
4−1.季節に合わせた色の選び方  
4−2. 年齢や立場に応じた色使い  
4−3.組み合わせによる調和の美
5.現代に生きる伝統色  
5−1.ファッションやインテリアでの活用   
5−2.デザインやブランドカラーへの影響  
5−3.着物以外で伝統色を楽しむ方法
6.まとめ  
6−1.日本人の感性が生んだ伝統色の魅力  
6−2.着物をより深く楽しむために知っておきたい色の意味
6−3. 伝統色を日常に取り入れる

1. はじめに

1-1. 日本の伝統色とは

日本の伝統色は、古来より日本人が自然や日々の生活の中から見出し、それぞれに名前を与えてきた色彩を指します。これらの色は、単なる視覚的な「色合い」に留まらず、日本の豊かな文化や繊細な感性そのものを映し出す鏡のような存在です。

例えば、「桜色(さくらいろ)」という言葉を聞くと、誰もが春の訪れを告げる儚くも美しい桜の花びらを思い浮かべるでしょう。また、「藍色(あいいろ)」は、日本の伝統的な染物である藍染めの深く落ち着いた布地を想起させます。このように、日本の伝統色は、私たちが暮らす自然や日々の営みと密接に結びついており、その意味や背景を知ることで、より深く日本の美意識を感じ取ることができます。

1-2. 着物と色彩の深い関係

着物は、布そのものの美しさに加えて、色彩の選び方によって印象が大きく変わる日本独自の衣装です。季節や年齢、さらには場面に合わせて色を選ぶことが重視され、その背景には伝統色が持つ象徴的な意味が大きく関わっています。

例えば、春に「若草色(わかくさいろ)」や「桃色(ももいろ)」の着物を纏えば、自然の息吹や新しい始まりを表すことができますし、秋に「茜色(あかねいろ)」や「黄土色(おうどいろ)」を取り入れると、紅葉や実りの季節を感じさせます。

着物好きにとって、色の知識を深めることは、装いを一層楽しむ鍵となります。

「源氏物語絵巻」国立国会図書館所蔵

1-3. 自然や四季との結びつき

日本の伝統色が他の国の色彩文化と大きく異なる点は、「自然と四季の移ろい」と深く結びついていることです。春は桜の花を思わせる「桜色」や「桃色」、夏は清涼感あふれる「浅葱色」や「藍色」、秋は紅葉を映す「茜色」や「黄土色」、冬は静けさを表す「墨色」や「白鼠(しろねず)」といった具合に、自然の姿がそのまま色名や色合いとして表現されています。

日本人は古来より、自然の変化を敏感に感じ取り、それを暮らしや装いに反映してきました。特に着物においては、色を通じて「季節をまとう」という感覚が重んじられており、これは四季のはっきりした日本ならではの美意識だと言えるでしょう。

山桜
山桜

2.日本の伝統色の特徴

2-1. 四季折々の自然を映す色

日本は四季がはっきりしており、それぞれの季節ごとに異なる美しさがあります。春は桜や若葉、夏は深緑や青空、秋は紅葉や黄金色の稲穂、冬は雪や寒椿。こうした自然の移ろいをそのまま映し出したのが日本の伝統色です。

たとえば、春の「桜色(さくらいろ)」や「若草色(わかくさいろ)」は、生命の芽吹きや希望を象徴し、秋の「紅葉色(もみじいろ)」や「黄土色(おうどいろ)」は豊かさや成熟を感じさせます。このように、自然と人の暮らしが調和している点が、日本の色彩文化の大きな特徴です。

紅葉
紅葉

2-2. 侘び寂びの美意識

日本の伝統色は、鮮やかさだけでなく「侘び寂び(わびさび)」の美意識を色で表現している点も特徴的です。侘び寂びとは、派手さよりも控えめな美、時の流れや不完全さを受け入れる感性のこと。

たとえば「鼠色(ねずみいろ)」や「利休茶(りきゅうちゃ)」などの落ち着いた色合いは、一見地味に見えますが、深みのある趣を持っています。こうした色は、心を静かに落ち着かせ、周囲の自然や人との調和を大切にする日本独特の感覚を表しています。

「利休茶の小紋 鹿の子絞り 袷 」たんす屋オンラインストア

2-3. 西洋の色彩感覚との違い

西洋の色彩文化は「明快で強いコントラスト」が好まれる傾向があります。一方、日本の伝統色は「微妙な中間色」や「自然に溶け込む色合い」が重んじられます。たとえば「青」と「緑」の境界にあたる「青磁色(せいじいろ)」や、「赤」と「紫」の中間にある「蘇芳色(すおういろ)」などがその代表です。

このように、日本の色彩は「曖昧さ」や「移ろい」を美として捉える点に大きな特徴があるのです。

「和色大辞典」は日本の伝統色の名前とカラーコードが一目でわかるWEB色見本です。伝統的な日本の色が確認できます。

和色大辞典

3. 代表的な伝統色とその意味

3-1. 紅色(べにいろ)

紅色は、日本で古くから愛されてきた鮮やかな赤色です。平安時代には貴族の装束に用いられ、女性の美しさや生命力を象徴する色とされました。赤は血や火を連想させることから、「命の力」「邪気を払う力」を持つと信じられています。

現代でも祝い事や華やかな場でよく使われ、着物の差し色としても人気です。

「紅」は中国や日本の伝統色名。和名の「紅色」は主に女性の着物や唇、花、絵画、文化の中で用いられてきた格式ある色。「艶やか・華やか・高貴」な印象が強く、万葉集にも「紅の色」などの表現で登場。江戸時代以降も化粧品や衣装、絵の具(紅殻など)として使われました。
紅色 (ja)
#bd1e48

3-2. 藍色(あいいろ)

藍色は、日本を代表する染色文化「藍染(あいぞめ)」から生まれた色です。深みのある青は、清潔さや誠実さを表す色として親しまれてきました。
平安時代には主に宮廷や貴族が身につける高貴な色であり、位色の一つとして、高位層の衣服に用いられました。
武士の時代には「縁起の良い色」「勝色(かちいろ)」とされ、戦いに勝つことを願って武具や服に好んで使われました。特に濃い藍色は、「勝つ色」として重視された歴史があります。
江戸時代には「ジャパンブルー」と呼ばれ、海外からも高く評価されました。

この色は、日本の美意識や歴史的背景と深く結びつき、勝利・高貴・普遍・生活密着・癒しなど多様な象徴を持つ色といえるでしょう。

日本の伝統色として「藍色」と呼ばれる範囲は非常に広く、なんと48種もの名称が存在します。
代表的な色をご紹介します。

  • 瓶覗(かめのぞき):ごく淡い藍色。藍染めを一度だけさっと浸した、ほぼ白に近い薄い青。
  • 水浅葱(みずあさぎ):水色に近い、淡い藍色。
  • 浅葱(あさぎ):黄味を帯びた薄藍色。
  • 縹(はなだ):やや淡い鮮やかな藍色。
  • 納戸(なんど):暗めの青緑がかった藍色。
  • 深縹(こきはなだ):濃く暗い藍色。
  • 紺(こん):しっかり染めて作る暗く深い藍色。紺屋(こんや)の名前の由来。
  • 勝色(かちいろ):最も濃い藍色で、紫味を帯びることも。武士に縁起の良い色として使われた。

藍には防虫や抗菌の効果もあり、実用性と美しさを兼ね備えた伝統色です。

和名で直接「藍色」とされる色は、鮮やかな青みの強い左の色(#0D5661など)で、「ジャパンブルー」として海外でも広く認知されています。
藍色 あいいろ
#0d5661

3-3. 萌黄色(もえぎいろ)

萌黄色は、春先に芽吹いた若葉を思わせる明るい緑色です。生命の誕生や若々しさ、未来への希望を象徴します。
平安時代から使われてきた色名で、若さや生命力を象徴する色とされ、若者や若武者の衣装にも用いられました。

特に春の着物に取り入れると、季節感を強調し、自然との一体感を感じさせてくれます。若い世代の女性に好まれる色でもあります。

「源氏物語」「枕草子」「平家物語」など多くの古典文学に登場します。また武具などにも使われており、日本文化に根付いた春の色です。
萌黄色
#afd147

3-4. 桜色(さくらいろ)

桜色は、淡い紅色を帯びた優しいピンク。日本人にとって特別な花である桜をそのまま映した色です。平安時代にはすでに色名として使われており、本来は山桜の花のほんのりと薄い赤みに由来するといわれています。

桜は「儚さ」と「再生」を同時に象徴しており、桜色の着物をまとうと柔らかく優しい印象を与えます。春の結婚式やお祝いの場でも選ばれることが多い色です。

平安時代、「桜」といえばソメイヨシノではなく山桜であり、桜色も山桜のほのかに淡い紅色に由来します。
桜色
#fdeeef

3-5. 墨色(すみいろ)

墨色は、墨を磨ったときに現れる深みのある黒灰色。単なる「黒」ではなく、光の加減によって豊かな表情を見せます。

その落ち着いた色合いは「静けさ」「品格」を表し、格式ある場や茶道の装いにふさわしいとされてきました。シンプルでありながら奥行きを感じさせる、日本らしい美の象徴です。

伝統的には、僧侶の衣服や凶事にまつわる色としても用いられてきましたが、近代ではファッションやインテリア、装飾品にも使われるモダンな色として定着しています。

墨色は単なる黒ではなく「微妙な明るみや灰色がかった黒」として、日本独自の美意識や文化背景を持つ伝統色といえます。

墨色
#322b29

「薄墨色単衣紬 遠州椿」たんす屋オンラインストア

4. 着物における色の役割

4-1. 季節に合わせた色の選び方

春:桜色や若草色など、柔らかく明るい色

夏:藍色や浅葱色(あさぎいろ)など、涼やかで透明感のある色

秋:茜色、紅葉色、黄土色など、深みのある暖色系

冬:墨色、深緑、白鼠(しろねず)など、落ち着いた色合い

こうした色を取り入れることで、季節の自然と調和した装いを楽しむことができます。

4-2. 年齢や立場に応じた色使い

伝統的に、着物の色はその人の年齢や立場を映し出すものでもあります。若い世代は明るく華やかな色がよく似合い、年齢を重ねるにつれて落ち着いた色が選ばれる傾向にあります。

例えば、振袖には紅色や萌黄色といった鮮やかな色が映えますが、既婚女性の訪問着や色無地には利休茶や藍色といった控えめな色が好まれます。これにより、その人の品格や成熟した魅力が表現されるのです。

4-3. 組み合わせによる調和の美

着物は単色で着るだけでなく、帯や小物との組み合わせで美を引き立てます。ここで重要なのが「調和」。伝統色を組み合わせる際には、対比や補色関係を上手に活かすことが大切です。

紅色 × 墨色:華やかさと落ち着きの対比

桜色 × 藍色:優しさと誠実さの調和

萌黄色 × 茜色:自然の季節感を感じさせる組み合わせ

このように、伝統色の持つ意味や雰囲気を理解して組み合わせることで、装いに深みが生まれます。

5.現代に生きる伝統色

5-1. ファッションやインテリアでの活用

伝統色は着物だけにとどまらず、現代のファッションやインテリアにも広く取り入れられています。

例えば、ジャケットやワンピースに「藍色」を取り入れると、落ち着いた知的な雰囲気を演出できますし、バッグや靴などの小物に「紅色」を加えることで、コーディネートのアクセントになります。

また、インテリアでは「利休茶」や「白鼠」といった落ち着いた色が人気で、和モダンな雰囲気を作り出す要素となっています。自然と調和する色合いは、暮らしに安心感や温かみをもたらします。

5-2. デザインやブランドカラーへの影響

日本の伝統色は、現代のグラフィックデザインやブランドカラーにも取り入れられています。化粧品ブランドでは「桜色」が春の限定パッケージに使われたり、スポーツチームや企業ロゴに「藍色」が採用されたりする例もあります。

伝統色の持つ象徴的な意味は、単なる色合い以上のメッセージを伝え、ブランドの価値やイメージを強調する役割を果たしているのです。

桜をイメージしたクラランスの化粧品

5-3. 着物以外で伝統色を楽しむ方法

伝統色を日常に取り入れる方法は多様です。

・ネイルやアクセサリーに取り入れる

・和菓子や器の色合いを楽しむ

・手帳や文具を伝統色で揃える

このように、普段の生活に少し取り入れるだけでも、日本の色彩文化を身近に感じられます。特に現代では、オンラインショップやカラーコードで伝統色が簡単に再現できるため、気軽に楽しむことができるようになりました。

6. まとめ

6-1. 日本人の感性が生んだ伝統色の魅力

日本の伝統色は、四季折々の自然や暮らしの中から生まれました。それぞれの色には「意味」や「象徴」が込められており、単なる色彩ではなく、日本人の感性や精神性を映し出す存在です。紅色には生命力、藍色には誠実さ、桜色には儚さと優しさ…。どの色も、日本文化を語る上で欠かせない重要な要素です。

6-2. 着物をより深く楽しむために

着物は、日本の伝統色を最も美しく表現する衣装の一つです。季節や場面に応じた色の選び方、帯や小物との組み合わせを工夫することで、装いに奥行きと物語を持たせることができます。色の意味を知ることは、着物を「ただ着る」から「表現する」へと高める鍵となるのではないでしょうか。

6-3. 伝統色を日常に取り入れる

伝統色は決して特別な場だけのものではありません。現代のファッション、インテリア、デザイン、さらには文房具やアクセサリーなど、日常のあらゆる場面に取り入れることができます。伝統色を生活に取り入れることで、日本人としての感性や美意識を再発見できるはずです。

結びに

着物好きであればこそ、色の意味や由来を知ることで装いがさらに深く、豊かに感じられるでしょう。日本の伝統色は、過去から未来へと受け継がれる「色の言葉」です。その魅力を知り、自分らしい形で楽しむことが、着物ライフを一層輝かせてください。

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