2025年09月26日
リサイクル着物で叶える!男のカジュアル着物デビュー完全攻略(選び方・着付け・ケアまで)中編

前編で着物購入の基礎を固めたあなたは、いよいよ実践編へ。この中編では、着物選びにおいて最も重要かつ具体的な「失敗しない着物の選び方」に集中して解説します。特に、見た目の印象を大きく左右するサイズ選びのコツから、失敗しない色柄の選び方、そして普段使いに最適な素材の特性までを掘り下げます。
さらに、シーン別の着こなし例もあげて、実際に着物を着て出かけるイメージを具体化させます。あなたの着物ライフをより快適に、そして自信を持って楽しむための実践的な知識が、ここに詰まっています。
目次
前編
1. 本記事のゴール
1-1. この記事で得られること
1-2. 前提:この記事の想定シーン
1-3. 方針:入門でつまずかない3つの原則
1-4. 記事の読み方(ロードマップ)
2. まずはこれだけ揃えればOK
2-1. 各アイテムのポイント
2-2. “最初の買い方”セオリー
2-3. これだけチェック!
3. 予算別・入門スターターセット
3-1. まずは3万円セット(リユース×洗える素材)
3-2. 5万円セット(質と快適性を一段アップ)
3-3. 7〜8万円セット(羽織込みで“きちんと感”)
3-4. 10万円前後セット(長く使える“定番”を厳選)
4. どこで買う?入手先の選び方
4-1. リユース専門店(店舗):試着・相談の安心/価格は中庸
4-2. オンライン(リユース着物店):サイズ表が充実/返品規定要確認
4-3. フリマアプリ・オークション:掘り出し物/採寸・状態の自己判断が必須
4-4. セット販売の賢い活用法:小物は新品セット、主要3点はリユースで
中編(本編)
5. 失敗しないサイズ選び(男着物・実践ガイド)
5-1. まず覚えるべき“5つの寸法”
5-2. 男着物の正しい測り方
5-3. 数値の“早見ヒント”と許容差
5-4. 商品ページの採寸“読み方”と“落とし穴”
5-5. 試着のチェック(鏡の前で“5点チェック”)
5-6. “裄出し”などお直しの可否を見極める
5-7. 長襦袢と羽織のサイズ関係
5-8. 体型別アドバイス
5-9. フリマ/個人出品での“採寸確認”
5-10. 最後のチェックリスト(保存版)
6. 似合う色・柄の選び方(最初は外さない)
6-1. まずは“外さない”ベースカラー3本柱
6-2. 男着物の柄選び
6-3. 体型・印象別の“見え方調整”
6-4. 肌のトーン/髪色とのバランス(実用版)
6-5. 季節感の出し方(色・素材・小物の三点セット)
6-6. 3秒で決まる“色合わせの型”
6-7. 羽織を足すときの色設計
6-8. NGになりやすい組み合わせ(入門期)
6-9. ミニカプセル・ワードローブ(2着+帯2本で回す)
6-10. 買う前の色チェック術(オンラインで失敗しない)
7. 素材別のメリット・デメリット(洗える素材中心)
7-1. まずは早見表(実用優先)
7-2. 男の着物素材ガイド
7-3. (番外)正絹の立ち位置
7-4. 入門者あるある“誤解”を先回りで解消
7-5. 素材を“写真だけ”で見分けるヒント(オンライン向け)
7-6. 素材別ケアの“これだけ”ポイント
7-7. 迷ったらこう選ぶ
8. シーン別コーデの組み立て方
8-1. 普段着(カフェ・散歩・買い物)
8-2. ほんの少しフォーマルに(食事会・観劇・ギャラリー)
8-3. 夏(初夏〜盛夏)
8-4. 雨の日(旅行・通勤の悪天候)
8-5. 1日中歩く日(旅行・街歩き)
8-6. “写真映え”させる日の作り方(SNS・記念日)
8-7. さらにラフに寄せたい日(カフェ・作業)
8-8. 小物の足し算で“きちんと”に寄せる
8-9. すぐ真似できる“完成コーデ”4選(保存版)
8-10. 失敗を避けるチェック(出かける前の5秒)
後編
9. 買い方の手順(チェックリスト付き)
9-1. 最短ルート(10ステップ)
9-2. チャネル別フロー
9-3. 15分“仮試着”プロトコル(家でやる)
9-4. 到着後チェック(返品期限内に必ず)
9-5. 初回メンテの手順(洗える素材)
9-6. コピペOK:問い合わせテンプレ
9-7. 3万円カートの“電卓ルール”
9-8. 着物選びの落とし穴と対策
9-9. 直前5秒チェック(家を出る前)
10. お手入れ・保管
10-1. 洗える素材の基本プロトコル(長着・長襦袢)
10-2. “着た日〜翌日”の時短ルーティン(5分)
10-3. 汗・雨・においの緊急対応
10-4. 素材別・要点まとめ
10-5. 小物のお手入れ
10-6. 収納・保管(シーズンイン/オフ)
10-7. よくあるトラブルと解決
10-8. 旅行・出張の持ち運び術
10-9. “次もすぐ着られる”チェック(保存版)
11. よくあるQ&A
12. まとめ(最短で始めるコツの再確認)
12-1. 今週末から始める最短ルート(5ステップ)
12-2. 3万円スターターの配分テンプレ
12-3. 最初の1コーデ(保存版)
12-4. 素材の指針(迷ったらこれ)
12-5. “やらないこと”リスト(入門期の地雷)
12-6. 1ページ・チェックリスト(印刷推奨)
12-7. 次の一歩(“二枚目以降”の伸ばし方)
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5. 失敗しないサイズ選び(男着物・実践ガイド)
男着物は見た目の8割がサイズ。とくに裄(ゆき)が命です。ここでは「自分を測る→商品の数値を読む→試着で最終確認→調整余地を判断」の順で、実践的に解説します。

5-1. まず覚えるべき着物の“5つの寸法”
- 身丈(みたけ):背中心の首根っこから裾までの長さ(表記は「背から」or「肩から」の2種類がある)
- 裄(ゆき):背中心から肩を通り、手首のくるぶし(小指側の骨)までの長さ
- 袖幅(そではば):肩線から袖口まで(男物は約49cmが標準)
- 前幅:前身頃の幅(右身頃の幅)
- 後幅:後ろ身頃の幅(背中側の幅)
※前幅+後幅=身幅の目安。体幹のゆとりに直結します。
5-2. 男着物の正しい測り方
着物を着る上で最も重要な「サイズ」について、ここでは「自宅で失敗しないカンタン採寸ガイド」として、正確な寸法を測る方法を具体的に解説します。
用意するもの:柔らかいメジャー、鏡、着ていく予定の足袋/できれば草履に近い高さのスリッパ
- 裄
- 姿勢を正し、腕は自然に下ろす(軽く外側へ15°ほど開くと測りやすい)。
- 首の後ろの骨(第7頸椎)から肩先→肘外側→手首の小指側の骨まで真っ直ぐに測る。
- 目標値=実測±0〜+1cm
- 姿勢を正し、腕は自然に下ろす(軽く外側へ15°ほど開くと測りやすい)。
- 身丈
- 同じ首の骨から踵の上1〜3cmの位置までを測る(草履を想定)。
- 目標は着たときに床から1〜3cm浮くこと。
- ※リユースの商品ページでは身丈表記が「背から」なのか「肩から」なのか必ず確認しましょう。
- 同じ首の骨から踵の上1〜3cmの位置までを測る(草履を想定)。
- 袖幅
- 入門は49cm前後を狙えばOK(48〜51cmは許容範囲)。羽織も近い値に揃えると収まりが良い。
- 入門は49cm前後を狙えばOK(48〜51cmは許容範囲)。羽織も近い値に揃えると収まりが良い。
- 身幅(前幅+後幅)
- お腹まわり(帯を巻く高さ)で一周の実寸を測る。
- 目安として前幅25〜27cm/後幅30〜32cmが標準体型で扱いやすい。
- お腹が出ている人は前幅を+1cm見ておくと重なりが安定します。
- お腹まわり(帯を巻く高さ)で一周の実寸を測る。
5-3. 数値の“早見ヒント”と許容差
体格や腕の長さで変わるため参考値です。裄は必ず自分の実測で最終判断してください。
| 身長の目安 | 裄の目安(参考) | 袖丈 | 前幅+後幅(参考) |
| 165cm | 66〜68cm | 49cm前後 | 55〜57cm |
| 170cm | 68〜70cm | 49cm前後 | 56〜58cm |
| 175cm | 70〜72cm | 49cm前後 | 57〜59cm |
| 180cm | 72〜74cm | 49cm前後 | 58〜60cm |
許容差の考え方
- 裄:±3cmまでなら実用範囲。基本は「手首の骨が隠れる長さ」ですが、現代は少し長めが主流。短いほうが違和感が出やすいので、迷ったら長めに。
- 身丈:目標丈に対し−2〜+3cmは許容。メンズはおはしょりを作らないので長すぎはNG。
- 前幅+後幅:帯下の重なりが4〜7cm取れればOKです。
5-4. 商品ページの採寸“読み方”と“落とし穴”
- 身丈の基準:表記が「背から」か「肩から」かで数値が変わります。必ず確認してください。
- リユースは「背から」表記が多いようです。
- “身長=身丈”とは限りません(体格・腰位置・草履の高さで変動)。着たときに床から1〜3cm浮くのを目安に。
- リユースは「背から」表記が多いようです。
- 裄:記載が実測(背中心〜手首)か、肩幅+袖幅の合算かを確認。どちらでも良いですが、同じ基準で比較しましょう。
- 前幅/後幅:数字だけ見ず、着姿の前合わせ(重なり幅)もチェックしてください。
5-5. 試着のチェック(鏡の前で“5点チェック”)
- 前合わせ:左前(左が上)。みぞおちあたりで4〜7cmの重なりがある。
- 裄:両腕を下ろして手首の骨にかかる±1cm。腕を前へ出しても手首丸出しにならない。
- 後ろ裾:床から1〜3cm浮く。階段で踏まない程度に。
- 衿元:首後ろの衣紋(えもん)が1〜2cm抜け、喉元は苦しくない。
- 胴のシワ:帯位置の上下で横ジワが暴れない(伊達締めの位置・締め方も要調整)。
5-6. “裄出し”などお直しの可否を見極める
- 裄出し(裄を長くする):
- 目安:合計で最大2〜3cm出せるものが多い(縫い代がどれだけ残っているかで判断できます)。
- 見る場所:
- 肩山の縫い代(表からうっすら線=“アタリ”が出ていないか)
- 袖付け部分の縫い代(裏側の始末に余りがあるか)
- 肩山の縫い代(表からうっすら線=“アタリ”が出ていないか)
- 注意:大きく出すと筋(元の折り跡)や色ヤケの段差が表に出ることがあります。
- 目安:合計で最大2〜3cm出せるものが多い(縫い代がどれだけ残っているかで判断できます)。
- 袖丈詰め:±2cm程度は比較的容易です。
- 身幅:脇の縫い代で多少いじれますが、前幅は限界が小さいです。腹囲が大きい人は最初から前幅が広めのものを探すのが得策です。
迷ったら「裄何cmまで出せますか?肩山と袖付けの縫い代写真を見せてください」などとショップに依頼しましょう。
5-7. 長襦袢と羽織のサイズ関係
- 長襦袢の裄:長着−0〜1cmを目安にするのが一般的です。長襦袢が長着より長いと袖口から覗き、見た目が良くありません。
- 羽織の裄:長着と同等〜+0.5〜1cmがきれい(手首の露出を抑える)。
- 長襦袢の袖丈:長着(着物)よりも「少し短め」に作るのが基本です。具体的には長着より0.75cmほど短く仕立てるのが理想的です。
- 羽織の袖丈:長着よりもさらに少し短く仕立てるのが基本で、長着の袖丈より1.5cm、または8〜12mm短くするのが一般的です。
5-8. 体型別アドバイス
- 腕が長い方:裄優先で探す。見つからなければ羽織を足して露出をカバー。
- お腹が出ている:前幅25→26〜27cmを目安に。帯位置はへそ下で安定させる。
- 高身長:身丈が足りない着物は草履の台を高めにしてバランスを取る手も(ただし限度あり)。
- 低身長:身丈が長すぎる個体は要お直しです。メンズはおはしょりを作らないため、“長すぎ”は妥協しないことが大切。
5-9. フリマ/個人出品での“採寸確認”
出品者の記載が曖昧なときは、次のどちらでもOKな形に整えてもらうように問い合わせてみましょう。
- 裄=肩幅+袖幅で何cm?(もしくは背中心〜手首で何cm?どちらか統一)
- 身丈=背からか肩からかを明記
- 前幅と後幅=それぞれの実寸
- できれば肩山・袖付けの縫い代写真も依頼(裄出し可否確認)
5-10. 最後のチェックリスト(保存版)
☐ 裄は実測±0〜+1cm内
☐ 身丈は床から1〜3cm浮く着丈になる
☐ 袖丈は49cm前後(羽織・襦袢と揃う)
☐ 前幅+後幅は標準55〜59cmを目安(体型に応じて調整)
☐ リユースは肩のテカり・衿の黄ばみ・裾の擦れを写真で確認
☐ お直しの縫い代(裄)の有無を把握
6. 似合う色・柄の選び方(最初を外さないことが重要)
入門の合言葉は「濃色ベース × 小柄(こがら) × 帯で差し色」。ここを押さえるだけでそれっぽく決まる確率が一気に上がります。
6-1. まずは“外さない”ベースカラー3本柱
- 濃紺(ネイビー):清潔・知的・どの帯色も受け止める万能色。
- 墨黒(チャコール〜黒に近いグレー):都会的で締まる。帯の色が映える色です。
- 深緑(ボトルグリーン〜オリーブ):落ち着き+個性。茶系帯と好相性。
迷ったら濃紺。2枚目で墨黒 or 深緑へ。
帯の“差し色”テンプレ
- からし
- 焦げ茶(ダークブラウン)
- 藍・紺(トーン違いで重ねる)
- 渋赤(えんじ寄り、彩度低め)
6-2. 男着物の柄選び
男着物の柄選びで、初心者が失敗しない、しかも垢抜けるためには細縞・無地・控えめ選ぶことをお勧めします。
- 細縞(ピンストライプ)/細格子(千鳥・霜降り風)が入門向き。
- 大柄の市松・幾何学模様などは難易度高めです:まずは帯や羽織紐で遊ぶ。
- 光沢強めの生地はテカりで“安っぽく見える”ことがある→マット調を選ぶ。
6-3. 体型・印象別の“見え方調整”
- 身長が高い/肩幅がある:縦に細い縞でさらにスタイルUP。帯は暗色で引き締める。
- がっしり体型:無地〜細格子で面を整え、帯は濃茶・藍など落ち着いた色に。
- 華奢体型:中細縞や霜降り調で面に“奥行き”。帯にからし・渋赤を一点。
6-4. 肌のトーン/髪色とのバランス(実用版)
- 肌が明るめ:濃紺・深緑が顔色を引き締める。半衿は白 or 生成り。
- 肌が健康的〜小麦色:墨黒・オリーブがなじむ。帯に藍・焦げ茶で品よく。
- 白髪・グレイヘア:チャコール・濃紺×からし帯でコントラストを作ると洒落感。
6-5. 季節感の出し方(色・素材・小物の三点セット)
- 春:灰青・薄墨+生成り半衿、帯は藍 or からし控えめ。
- 夏:薄色の単衣 or 麻+白半衿/白足袋、帯は生成り・薄藍。
- 秋:深緑・栗色・濃紺+焦げ茶帯。羽織紐はベージュやカーキ。
- 冬:墨黒・チャコール+渋赤・からしで温度感を。起毛インナーで表はすっきり。
6-6. 3秒で決まる“色合わせの型”
- 濃紺の長着 × からし帯 × 白半衿
- 墨黒の長着 × 焦げ茶帯 × 生成り半衿
- 深緑の長着 × 藍帯 × 白半衿
- 濃紺の長着 × 渋赤帯 × 白半衿(写真映えします)
帯は無地〜極小柄を選ぶと、長着の表情を邪魔しません。
6-7. 羽織を足すときの色設計
- 同系色グラデ(濃紺→紺、墨黒→チャコール、深緑→オリーブ)が最小リスク。
- 帯で差し色を入れているなら、羽織はさらに無地寄りでバランスを取る。
- 羽織紐は白〜ベージュ〜薄グレーのベーシックを一本所持。
6-8. NGになりやすい組み合わせ(入門期)
- 長着も帯も強い柄:主役がケンカして散漫に。
- 長着が明るい色+テカリ素材+明るい帯:コスプレ感が強まる危険性が。
- 大きい格子や派手な幾何学:まずは帯・羽織紐で“柄の遊び”を。
6-9. ミニカプセル・ワードローブ(2着+帯2本で回す)
ミニカプセル・ワードローブとは、必要最小限のアイテムだけを厳選して構成された、コンパクトで着回し力の高いワードローブのこと。「厳選した少ない服だけで作るワードローブ」や「着回しできる服だけ揃えたクローゼット」という意味です。
- 長着:濃紺(無地)/深緑(細縞)
- 帯:焦げ茶/からし
- 半衿:白 ×2、生成り ×1
- 羽織:チャコール
→ 春秋冬ほぼ全域で回せます。帯を藍に差し替えれば“渋め”モードへ。
6-10. 買う前の色チェック術(オンラインで失敗しないために)
オンラインショッピングが普及した現在、着物もネットで購入する方が増えています。しかし、着物の色選びには特有の注意点があることに注意が必要です。
画面で見た美しい色合いと、実際に届いた着物の色が「全然違う!」という経験をした方も少なくないはず。そんなトラブルを避けるための対策をご紹介します。
購入前にチェックしたいポイント
📸 複数の写真を必ずチェック
- 異なる照明条件(自然光・室内光など)で撮影された写真
- 様々な角度から撮影された写真
- 全体写真だけでなく、生地のアップ写真も確認
📝 商品説明を詳しく読む
- 色に関する具体的な記述(「深紅」「朱色」など)
- 光沢の有無や生地の質感についての説明
- 撮影環境に関する注意書き
💬 不安な時は販売店に問い合わせる
- 「どの写真が実物に最も近いですか?」
- 「○○色と△△色、どちらに近いでしょうか?」
- 「光沢はどの程度ありますか?」 など、遠慮せずに具体的に質問してみましょう
👥 購入者レビューも要チェック
- 実際に購入した人の色味についてのコメント
- 「思っていた色と違った」「写真通りでした」などのリアルな声
- 生地感や光沢についての率直な感想
なぜ色味の違いが生まれるのか?
着物の色が画面と実物で異なって見える主な原因は:
- 撮影時の照明:スタジオライトと自然光では色の見え方が大きく変わる
- モニターの違い:PCやスマホの画面設定により同じ画像でも色味が変化
- 生地の特性:絹の光沢や織りの違いで光の反射具合が変わる
7. 素材別のメリット・デメリット(洗える素材中心)
入門は”洗えること”がまず第一。ここでは街着メインで使いやすいポリエステル/木綿/ウール/麻/ポリ混を、季節性・見た目・洗濯・価格感の観点で整理します。(番外で正絹の立ち位置も解説)
7-1. まずは早見表(実用優先)
| 素材 | 季節の適性 | 見た目・風合い | 洗濯のしやすさ | 価格帯の目安(リユース) | 向いている人 |
| ポリエステル | 通年(とくに雨天◎) | マット調なら落ち着く/光沢強だとテカりやすい | 家庭洗濯OK/速乾/シワ戻り良 | 長着8千〜2万円 | とにかく気軽に着たい、雨や汗を気にせず練習したい |
| 木綿 | 通年(真夏・真冬はインナー調整) | 体に馴染む・反射少なく“街着感”が強い | 家庭洗濯OK(多少縮む前提)/乾きは遅め | 長着1万〜2.5万円 | 自然素材の肌当たりが好き、落ち着いた雰囲気が好み |
| ウール | 秋冬〜早春 | 軽く暖かい/マットで品あり | 家庭洗濯は要注意(縮みやすい) | 長着5千〜1.5万円 | コスパ重視で冬の一着が欲しい/リユースで探したい |
| 麻(苧麻/ラミー等) | 盛夏特化 | 風が抜ける・清涼感/シワは出やすい | 家庭洗濯OK(ネット推奨)/速乾 | 長着1.2万〜3万円 | 真夏も涼しく着たい、汗っかき |
| ポリ混(ポリ×レーヨン等) | 通年 | ポリの扱いやすさ+落ち感が出る | 洗濯表示に幅あり(タグ確認必須) | 長着1万〜2.5万円 | テカりを抑えつつイージーケアも欲しい |
*価格は一般的な相場感です。状態・ブランド・仕立てで上下しますのでご注意ください。
7-2. 男の着物素材ガイド
ポリエステル・木綿・ウール・麻のメリット・デメリットと選び方をお伝えします。
ポリエステル(いわゆる“洗える着物”の代表)
- メリット:自宅で丸洗い可/乾きが早い/雨に強い/色移り・縮みが起きにくい。練習や旅行に最適。
- デメリット:静電気が起きやすい/安価品は光沢(テカり)が目立つ/夏はやや蒸れる
- 選び方のコツ:商品説明に“マット調”シボ感あり“紬風”などの記述があれば日常着向け。濃色無地〜細縞で質感の良し悪しが目立ちにくい。
- ケア:ネット+弱水流+中性洗剤+陰干し。柔軟剤は静電気対策にも有効。
ポリエステルの着物地としてして東レのシルックなどが有名です → 東レシルックきもの
木綿(会津木綿・備後・デニム木綿など)
- メリット:肌当たりがよく馴染みが出る/反射が少なく落ち着いた見た目/季節の幅が広い。
- デメリット:洗うと多少縮む/乾きが遅い/雨天では重くなる。フォーマルな場面には基本不可。
- 選び方のコツ:織り目の詰まった中厚が通年向け。最初は濃紺・墨黒の無地や細縞。
- ケア:初回は単独洗い→軽く脱水して形を整え陰干し。気になる皺は当て布アイロン。
ウール(リユースに多い“ウール着物”)
- メリット:軽くて暖かい/価格が手頃/マットで上品。冬の街着として優秀。
- デメリット:縮みやすいため家庭洗濯は要注意(基本はドライ推奨)/虫食いが出やすい/季節の制限が強い。
- 選び方のコツ:リユースは虫食いピンホールを要チェック(特に裾・肩)。ダークトーン無地が外さない。
- ケア:着用後はブラッシング→陰干し。保管は防虫剤と乾燥を意識。
麻(苧麻/ラミー・リネン等)
- メリット:風抜けが抜群で速乾。見た目も軽やかで夏映え。
- デメリット:シワが出やすい/透け感がある(濃色インナーや下着配慮)/シーズンが限られる。
- 選び方のコツ:入門は苧麻(ラミー)のシャリ感が扱いやすい。淡色は透けに注意、濃色や中間色が安心。
- ケア:ネット+弱水流で短時間洗い→形を整えて陰干し。アイロンは半乾きで当て布。
麻についてはこちらのサイトが詳しいのでぜひ参考にしてください → 近江麻・近江ちぢみ
ポリ混(ポリエステル×レーヨン等の混紡)
- メリット:ポリのイージーケア+レーヨン等の落ち感・マット感で、見た目の“きちんと感”が出しやすい。
- デメリット:混率で洗濯可否が変わる(タグに従う)/濡れたまま放置でテカり跡が出ることも。
- 選び方のコツ:説明に“手洗い可”の記載があるものから。黒〜チャコールの無地は特に使い勝手が良い。
- ケア:タグ表示最優先。基本は手洗い短時間→陰干し。
7-3. (番外)正絹の立ち位置
- 良さ:落ち感・艶・発色が段違いです。体に沿うドレープで“格”が上がるのが正絹の良いところ。
- 難しさ:水に弱い(基本は水洗い不可)/雨に不向き/保管に湿度管理が必要。
- 入門の使い方:最初の一式は洗える素材で慣れ、着付けが安定してから羽織だけ正絹など段階的に取り入れるのがおすすめです。
7-4. 入門者あるある“誤解”を先回りで解消
- Q:ポリ=テカテカで安っぽい?
→ マット調ポリや紬風織りは落ち着いた質感。写真で生地表面の粒立ちが見えるものを選びましょう。 - Q:木綿はカジュアルすぎ?
→ 街着用途なら最適解です。帯と羽織を整えれば“きちんと”も十分いける素材です。 - Q:麻はシワが心配
→ “シワを味”として楽しむのがコツ。座りジワは霧吹き→陰干しでかなり戻ります。 - Q:ウールはチクチク?
→ 個体差あり。薄手の長襦袢をしっかり着ればほぼ気にならないことが多いです。
7-5. 素材を“写真だけ”で見分けるヒント(オンライン向け)
- 光の反射:テカりが強く面に均一な反射→ポリの可能性高。点々とした粒立ち→マット調や木綿・紬風。
- 皺の出方:折り皺が角ばってパキッ→合繊寄り。柔らかく波打つ→木綿・麻寄り。
- ドレープ:ストンと落ちる→レーヨン混・正絹寄り。張りが残る→ポリ・麻寄り。
※上記は一般的な傾向や目安を示すものであり、個々の商品や素材の状態、製造元によって異なる場合があります。
あくまで参考情報としてご活用いただき、最終的な判断はご自身の責任において行ってください。
7-6. 素材別ケアの“これだけ”ポイント
- 共通:ネット/弱水流/中性洗剤/陰干しが基本。乾燥機は不可。
- 静電気対策(ポリ・ポリ混):柔軟剤/静電気防止スプレー/長襦袢や帯を綿混に。
- 縮み対策(木綿):初回は単独洗い・干す前に形を整える。
- 型崩れ対策(麻):半乾きでアイロン→ハンガー幅は広めを使用。
- 虫害対策(ウール):ブラッシング→陰干し→防虫剤。オフシーズンは不織布カバー。
7-7. 迷ったらこう選ぶ
- 最初の1着:マット調ポリエステルの濃色無地(雨・汗OK、練習最強)
- 2着目:木綿の細縞で街着の奥行きを追加
- 夏用:麻長着+生成り〜藍の帯
- 冬用:ウール長着 or ポリ長着+起毛インナー
- 見た目重視で一段格上げ:ポリ混(ポリ×レーヨン等)で落ち感を足す
8. シーン別コーデの組み立て方
入門のうちは「場×気温×歩く距離」で決めるのがラク。
ここでは普段着/きちんと目/夏/雨の日を中心に、「色・素材・小物」の3点セットで具体例を示します。
用語ミニ解説:博多角帯=やや張りのある締め心地の良い帯。羅(ら)=夏用の粗めの透ける織り。貝の口=男性帯の基本の結び方。
8-1. 普段着(カフェ・散歩・買い物)
ねらい:動きやすく、気軽。
レシピ
- 長着:マット調ポリ or 木綿(濃紺/墨黒/深緑)
- 帯:綿角帯(無地〜細柄)
- 半衿:白 or 生成り
- 足元:ストレッチ足袋+草履(長距離はクッション良い台)
- 追加小物:寒い日はマフラー(ウール・無地)を首元に
色合わせ即決パターン
- 濃紺 × からし帯
- 墨黒 × 焦げ茶帯
ワンポイント:帯を柔らかめにすると結びが安定。初めての外出は人が少ない日中で慣らし運転。
8-2. ほんの少しフォーマルに(食事会・観劇・ギャラリー)
ねらい:清潔感と“整って見える”輪郭。
レシピ
- 長着:上質ポリの無地〜極細縞
- 羽織:長着と同系色(チャコール/濃紺)
- 帯:博多角帯(濃茶 or 藍)
- 半衿:白(清潔第一)
- 足元:白足袋+鼻緒の当たりが柔らかい草履
配色例
- 墨黒(長着) × 濃紺(羽織) × からし(帯)
- 深緑(長着) × チャコール(羽織) × 焦げ茶(帯)
コツ:羽織紐は白〜薄グレーの無地で汎用性アップ。写真映えは帯だけ1トーン明るく。
8-3. 夏(初夏〜盛夏)
ねらい:見た目も体感も涼しく着こなす。
レシピ(盛夏)
- 長着:麻(苧麻/ラミー) or 薄手ポリ単衣
- 帯:麻角帯 or 羅の帯(通気性◎)
- 半衿:白(メッシュ半衿も快適)
- 足元:白足袋+草履(台は軽め)
配色例
- 灰青(麻) × 生成り(帯)
- 薄藍(単衣) × 紺(帯)
コツ:麻はシワを味方に。座りジワは霧吹き→陰干しでリセット。羽織は基本オフにして風を通す。
8-4. 雨の日(旅行・通勤の悪天候)
ねらい:濡れを恐れず、足元まで快適。
レシピ
- 長着:ポリエステル一択(濃色)
- 帯:ポリ or 綿角帯(色移りの少ないもの)
- 羽織/コート:撥水コート or 雨コート(あれば)
- 足元:合皮台の草履/替え足袋をビニール袋で携帯
- 事前ケア:撥水スプレーを裾まわり&袖口に
コツ:帰宅後は水気を払って陰干し→衿・裾の当て布アイロンで形復元。
8-5. 1日中歩く日(旅行・街歩き)
ねらい:足の疲れと着崩れを最小化。
レシピ
- 長着:マット調ポリ(シワ戻り◎)
- 帯:綿角帯(柔らかめ)
- インナー:吸汗速乾T+ステテコ
- 足元:クッション良い草履(鼻緒が痛くないもの)
小技
- 帯の結び目をやや脇寄せにすると腰骨への当たりが減る。
- 替え半衿(汚れが目立ったらサッと交換)を旅行カバンに。
8-6. “写真映え”させる日の作り方(SNS・記念日)
ねらい:強くしすぎず、メリハリを作る。
レシピ
- ベース:濃紺 or 墨黒の無地
- 帯:渋赤 or からし(差し色)
- 羽織:同系色グラデ(濃→淡)
- 羽織紐:生成り〜ベージュで抜けを作る
ポーズ対策:帯の結び目(貝の口)をやや高めにすると脚長効果。半衿はピンと張る(衿芯)。
8-7. さらにラフに寄せたい日(カフェ・作業)
ねらい:締め付け感を軽減。
レシピ
- 長着:木綿(細縞)
- 帯:兵児帯(へこおび)※柔らかい帯。一文字など簡単結びで腰回りがラク。
- 足元:黒や紺の足袋+草履(もしくは足袋スニーカー※街着なら可)
兵児帯は“さらにカジュアル”。角帯より全体が柔らかく見えるので、場がカジュアルな日に。
8-8. 小物の足し算で“きちんと”に寄せる
- 半衿:白をベースに、生成りへ替えると秋冬の温度感。
- 羽織紐:無地ベージュ/白/グレーの3本あれば大抵足ります。
- 帯揚げ・帯留め:男性は基本不要。使うなら無地の帯揚げを帯の中に“見えない補強”として。
8-9. すぐ真似できる“完成コーデ”4選(保存版)
- 濃紺ポリ長着 × からし綿角帯 × 白半衿 × 黒鼻緒草履
- 墨黒ポリ長着 × 濃紺羽織 × 焦げ茶博多帯 × 白足袋
- 深緑木綿長着 × 藍綿角帯 × 生成り半衿 × 焦げ茶草履
- 薄藍単衣(夏) × 生成り麻帯 × 白半衿 × 白足袋+軽量草履
8-10. 失敗を避けるチェック(出かける前の5秒)
☐ 半衿はまっ白でシワなし?
☐ 帯の結び(貝の口)は水平&中心?
☐ 裾は床から1〜3cm浮いている?
☐ 袖の裄は手首の骨±1cm?
☐ 草履の鼻緒は痛くない?
中編のまとめ
本中編では、リユース着物でのカジュアル着物デビューに向け、「失敗しない着物選び」を徹底解説しました。見た目を左右するサイズ選びの5つの寸法と測り方、似合う色柄の選び方、そして普段使いに最適な素材のメリット・デメリットを詳述。さらに、シーン別の着こなし例も提示し、着物ライフを快適に楽しむための実践的な知識が詰まっています。
後編では、実際の着物の買い方や日々の手入れ、保管方法について詳しく解説し、さらにQ&Aも加えています。
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