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2025年11月18日

着物用語辞典:初心者が知っておくべき50の用語

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着物の世界は、専門用語が多く初心者には敷居が高く感じられがちです。基本的な用語を知ることで、お店や教室、イベントでもコミュニケーションが円滑になり、着物選びや着付け、コーディネートも自信を持って楽しめます。

また、用語を理解することで、着物文化の歴史や作法に対する理解も深まり、日本文化の魅力をより身近に感じられるようになります。最初の一歩として「初心者が知っておくべき50の用語」は、安心して着物を始めるための強い味方です

この辞典の「使い方」:用語は学ぶ順番が大切!

「着物って言葉がたくさんあって、何から覚えればいいのかわからない…」

そう感じているあなたのために、この記事では着物用語を「あいうえお順」ではなく、「着物を着られるようになるために、知っておくべき順番」に並べて解説していきます!

辞書のように並んでいると、たまたま「あ」の行で出てきた言葉と、「お」の行で出てきた言葉のつながりがわからず、頭の中がごちゃごちゃになってしまいます。

例えば、「袷(あわせ)」が季節の用語だと学んだ直後に、「お太鼓結び(おたいこむすび)」という帯の結び方を習っても、「あれ、何がどう関係してるの?」と戸惑ってしまいますよね。

だからこそ、この用語集では、着物ビギナーのあなたがスムーズに知識を積み重ねられるよう、以下の流れで構成しました。

  1. まずはここから! 着物の「フォーマルなルール(格とTPO)」
    カテゴリー1
  2. 何を着る? 「着物と帯の種類」
    カテゴリー2
  3. どうやって着る? 「着物の体の部分の名前と必要な小物」
    カテゴリー3.4.5

この順番で読むと、着物の世界が「地図」のように見えてきます。「何から学べばいいかわからない」という不安も解消されるはずです。

もちろん、特定の言葉をすぐに調べたい時もあるでしょう。そのため、記事の最後に「あいうえお順の索引」も用意しています。

初めて読むときは「教科書」として、困ったときは「辞書」として、ぜひ活用してくださいね!


目次

カテゴリー1:着物の「格」とTPO(最重要の基本概念)

1. TPO (ティーピーオー)
2.格 (かく)
3.礼装 (れいそう) / 正礼装 (せいれいそう)
4.準礼装 (じゅんれいそう) / 略礼装 (りゃくれいそう)
5.外出着 (がいしゅつぎ) / 盛装 (せいそう)
6.普段着 (ふだんぎ) / 街着 (まちぎ)
7.紋 (もん)
8.五つ紋 (いつつもん)
9.三つ紋 (みつもん)
10.一つ紋 (ひとつもん)

カテゴリー2:着物と帯の種類(購入と選択の基本)


【女性の着物:Women’s Kimono】

11.黒留袖 (くろとめそで)
12.色留袖 (いろとめそで)
13.振袖 (ふりそで)
14.訪問着 (ほうもんぎ)
15.付け下げ (つけさげ)
16.色無地 (いろむじ)
17.小紋 (こもん)
18.紬 (つむぎ)

【男性の着物:Men’s Kimono】

19.黒紋付 (くろもんつき) / 黒羽二重五つ紋付 (くろはぶたえいつつもんつき)
20.羽織袴 (はおりはかま)
21.着流し (きながし)
22.御召 (おめし)

【季節の分類:Seasonal Rules】

23.袷 (あわせ)
24.単衣 (ひとえ)
25薄物 (うすもの) / 絽 (ろ)・紗 (しゃ)

【帯の種類:Obi Types】

26.袋帯 (ふくろおび)
27.名古屋帯 (なごや おび)
28.半幅帯 (はんはばおび)
29.角帯 (かくおび)
30.兵児帯 (へこおび)

カテゴリー3:着物の「部位」の名称(仕立てと着姿の理解)

31.裄 (ゆき)
32.身丈 (みたけ)
33.おはしょり (おはしょり)
34.対丈 (ついたけ)
35.袖 (そで)
36.袖丈 (そでたけ)
37.袂 (たもと)
38.衿 (えり)
39.衽 (おくみ)
40.背縫い (せぬい)

カテゴリー4:着付けに必要な「小物」(着るための準備)

【レイヤー(肌着・襦袢):Layering Items】

41.襦袢 (じゅばん) / 長襦袢 (ながじゅばん)
42.肌襦袢 (はだじゅばん)
43.ステテコ (すててこ)
44.半衿 (はんえり)
45.衿芯 (えりしん)
46.足袋 (たび)

【美しい着姿を作る道具:Structural Tools】

47.腰紐 (こしひも)
48.伊達締め (だてじめ)
49.帯板 (おびいた) / 前板 (まえいた)
50.帯枕 (おびまくら)

カテゴリー5:装いを完成させる小物と結び方(仕上げと応用)

51.帯締め (おびじめ)
52.帯揚げ (おびあげ)

53.帯留め (おびどめ)
54.お太鼓結び (おたいこむすび)
55.男結び (おとこむすび) / 貝の口 (かいのくち)



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カテゴリー1:TPO(最重要の基本概念)と 着物の「格」


初心者が着物で失敗する最大の原因は、「TPO(時・場所・場合)と『格(かく)』のミスマッチ」です 。

着物の「格」は、たとえば「振袖は常に100点、紬は常に10点」というような、最初から決まっている固定の点数(静的な分類)ではありません。

例えるなら、ゲームでキャラクターの「強さレベル」を上げるのと同じです。

「動的なシステム」とは?

「格」のレベルは、あなた自身が選ぶアイテムの「組み合わせ」によって、その都度変わります。これが「動的なシステム」という意味です。

1.着物本体:たとえば、無地の「色無地」は、そのままでは普段着くらいの格です。(スタート地点)

2.紋(家紋)の数:この色無地に「一つ紋」を入れるだけで、一気に格が上がり、お祝いの席でも着られる「準礼装」になります。(カスタマイズでレベルアップ!)

3.帯の種類:さらに、合わせる帯をカジュアルな「半幅帯」から、格式の高い「袋帯」に変えることで、格をさらに高めることができます。(装備の変更で格が変化!)


つまり、TPO(時・場所・場合)に合わせて、これら3つの要素(着物・紋・帯)をパズルのように組み替えることで、同じ着物でも「普段着」にも「準礼装」にも変化させられる、柔軟で生きたルールだと理解すると、着物選びがぐっと楽になります。

1.TPO (ティーピーオー)


Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の頭文字をとった言葉です。着物の世界では、「いつ、どこで、どんな目的で着るか」というTPOに合わせて、ふさわしい服装を選ぶことが、一番大切なマナーであり、着物文化の土台となる考え方です。

項目意味
Time季節や時間帯春の昼間、夏の夜など
Place着ていく場所結婚式場、レストラン、茶室など
Occasion用途や目的結婚式の主催者か、ゲストか



洋服と違って少し面倒に感じるかもしれませんが、これを理解すると「着物選びで失敗する」ことがなくなり、堂々と着物を楽しめるようになります。

2. 格 (かく)

女性の礼装・黒留袖と小物
女性の礼装 黒留袖と小物類


着物の「フォーマル度」を示す序列やルールのこと。この『格』を理解することが、着物を着る上で最も大切なマナーとなります。

『格』は、着物の種類、帯の種類、紋(家紋)の数といった要素の組み合わせで決まる「動的なシステム」であり、TPO(時・場所・場合)に合わせてふさわしい装いを選ぶための判断基準になります。

この序列は大きく「礼装」「準礼装」「外出着」「普段着」の4つに区分されます。礼装に近いほど、格式高い、フォーマルな場での装いであることを示します。

3. 礼装 (れいそう) / 正礼装 (せいれいそう)


最も格が高い、フォーマルな装いのこと。冠婚葬祭において、主に主催者側(結婚式の新郎新婦や親族、葬儀の喪主など)が着用する装いです。

・【女】黒留袖、本振袖、喪服
・【男】黒紋付羽織袴(黒羽二重五つ紋付)

4. 準礼装 (じゅんれいそう) / 略礼装 (りゃくれいそう)

色留袖のイメージ写真
色留袖


礼装に次ぐ格式を持つ装いで、最も幅広く使われるフォーマルな装い(セミフォーマル)です。

結婚式のゲスト、入学式・卒業式の付き添い、七五三、お茶会、法事など、幅広い慶弔の場で着用されます。

・【女】訪問着 、色留袖(三つ紋・一つ紋)、紋付の色無地。
・【男】色紋付 。

5. 外出着 (がいしゅつぎ) / 盛装 (せいそう)


準礼装よりカジュアルで、普段着より格上の装いです。

観劇、友人との食事、パーティーなど、趣味として華やかさやファッション性を楽しむ場での装いとなります。

・【女】付け下げ 、柄の華やかな小紋 、紬の訪問着 など。
・【男】御召 、紬 (紋付)など。

6. 普段着 (ふだんぎ) / 街着 (まちぎ)


最もカジュアルな装いのこと。買い物、カフェ、街歩きなど、日常のお出かけに使われます 。

・【主な種類(共通)】紬 、木綿 、ウール 、小紋 など。

7. 紋 (もん)

家紋の入った黒留袖イメージ画像
家紋の入った黒留袖


家紋のこと。着物の「フォーマル度」を示す序列である『格』を決定づける、最も重要な要素の一つです。

着物に入れる紋の数(五つ紋、三つ紋、一つ紋、無紋)によって、その着物の『格』が大きく変動します。

紋は、着物、帯、小物といった要素の組み合わせで決まる『格』のなかで、特に一度決まると変わることがなく、その着物の基本的な格式を決定づける要素であり、重要な判断基準となります。

例えば、無地の色無地であっても、紋を一つ入れるだけで「普段着」から「準礼装」へと格が上がり、着用できるTPOが大きく広がるように、「紋」が格を判断するうえで最も基礎的で重要な基準となります。

8. 五つ紋 (いつつもん)


最も格が高い「礼装」の印 。背中、両袖の後ろ、両胸の計5箇所に入れます。黒留袖や黒紋付など、第一礼装の着物には必ず施されます。

9. 三つ紋 (みつもん)


「準礼装」に適した格式 。背中と両袖の後ろの計3箇所に入れます 。色留袖や色無地 、男性の色紋付 などに用います。

10. 一つ紋 (ひとつもん)


「準礼装」から「外出着」まで幅広く使える格式 。背中の1箇所のみに入れます。色無地 や江戸小紋に入れると、格が上がり(小紋→外出着・準礼装)、着用シーンが広がります。

カテゴリー2:着物と帯の種類(購入と選択の基本)


『格』を理解したら、次に「何を着るか」という具体的なアイテム名を学びます。

ここでは、初心者が混乱しないよう、まず「男女で名称と種類が根本的に異なる」という事実を明らかにしておきます。

また、全ての着物に共通する「季節」の概念もここでお伝えします。

黒留袖、訪問着、小紋のイメージ写真

【女性の着物:Women’s Kimono】

着物の種類、黒留袖、色無地、訪問着のイメージ写真

11. 黒留袖 (くろとめそで)


【女・既婚】の第一礼装です。地色は黒で、裾にのみ「絵羽模様」という繋がった柄が描かれています。必ず五つ紋を入れます。

着用シーンは、結婚式で新郎新婦の母親や親族(主催者側)が着用します。

12. 色留袖 (いろとめそで)


【女・既婚未婚】の礼装・準礼装。地色が黒以外で、裾にのみ模様が入ります。紋の数(五つ紋=礼装、三つ紋・一つ紋=準礼装)で格が変わります。

着用シーンは、結婚式のゲスト、入学式・卒業式など、紋の数によって幅広い慶弔の場で着用されます。

13. 振袖 (ふりそで)

振袖イメージ画像
振袖


【女・未婚】の第一礼装。袖が非常に長いのが特徴です(「袂(たもと)」が長い。成人式や、結婚式のゲスト(友人・同僚)として着用されます。

着用シーンは、成人式や、結婚式のゲスト(友人・同僚)となる場で着用されます。

14. 訪問着 (ほうもんぎ)


【女】訪問着(ほうもんぎ)は、着る人の年齢や結婚しているかに関係なく、幅広いお祝いの席やフォーマルな場で着られる着物です。

一番の特徴は、着物の縫い目をまたいで柄が途切れず、一枚の絵のようにつながっている「絵羽模様」という豪華な柄付けです。

結婚式(親族以外)、卒業式・入学式、七五三、パーティーなど、多くの場面で活躍する「準礼装」にあたる着物です。色や柄が多彩なので、華やかさを演出したい時におすすめです。

15. 付け下げ (つけさげ)

付け下げのイメージ画像
付け下げ


【女】付け下げ(つけさげ)は、訪問着(ほうもんぎ)に次ぐ格を持つ、女性用の準礼装の着物です。

一番の特徴は、反物(仕立てる前の布の状態)で模様が付けられるため、着物の縫い目で柄が途切れ、つながっていない点です。訪問着のような豪華な絵羽模様ではなく、控えめで上品な柄が多いのが特徴です。

年齢や既婚・未婚を問わず着用でき、「ちょっとしたお出かけやお茶席、食事会など」訪問着ほどかしこまらない幅広いシーンで活躍します。初めて着物を着る方にとっても、コーディネートの自由度が高く扱いやすい一枚です。

16. 色無地 (いろむじ)


【女】色無地(いろむじ)は、黒以外の一色だけで染められた、柄のないシンプルな着物です。

最大の特徴は、落ち着いた雰囲気と着回しがきく万能さです。帯や小物を変えるだけで、印象がガラリと変わり、コーディネートの自由度が非常に高いのが魅力です。

家紋を入れると、お葬式やお祝いの席にも着られる略礼装・フォーマルな着物になります。紋を入れなければ、普段着やお稽古着としても使えるため、年齢やシーンを問わず着られる「最初の一枚」としても人気があります。

17. 小紋 (こもん)

小紋着物イメージ画像
小紋の着物


【女】小紋(こもん)とは、着物全体に細かい同じ模様が繰り返し染められている、おしゃれ着の着物です。

同じ柄が一定の方向で入っているのが特徴で、礼装用の訪問着などよりはカジュアルな着物です。普段のお出かけ着や、おしゃれをして外出する時などに幅広く使われます。

柄の上下や身頃の柄合わせを気にせず、気軽に着やすい点が魅力です。カジュアルから上品なデザインまで種類が豊富なので、日常的に着物を楽しむのにぴったりの一枚と言えます。

18. 紬 (つむぎ)


【男女共通】の代表的な普段着です。
格:代表的な普段着。非常に高価なものもありますが、あくまで最もカジュアルな装いであり、フォーマルな場には着用できません。

特徴:先に染めた糸(紬糸)を使って織り上げる「先染め」の「織りの着物」です。独特の風合いと趣味性の高さが魅力で、産地ごとの特色が豊かなのも特徴です(例:大島紬、結城紬、牛首紬などの日本三大紬)。

着用シーン:買い物、友人との食事、街歩きなど、日常のカジュアルなお出かけに。

大島紬イメージ画像
大島紬


【男性の着物:Men’s Kimono】

19. 黒紋付 (くろもんつき) / 黒羽二重五つ紋付 (くろはぶたえいつつもんつき)


【男】黒紋付(くろもんつき)は、男性和装で最も格式が高い「第一礼装」です。

特に「黒羽二重五つ紋付」は、黒い絹の着物と羽織に、家紋を5つ(背中・両胸・両袖)白く染め抜きで入れたもの。結婚式の新郎や成人式などの最も正式な場で着用されます。慶事(お祝い)にも弔事(お悔やみ)にも使える最上級の装いです。

【初心者の注意点】

・この装いは最も格式が高いため、小紋や紬などの普段着の着物には不向きです。

・合わせる羽織紐や足袋などは白を選ぶのが基本ですよ。

20. 羽織袴 (はおりはかま)

紋付きの羽織袴姿
紋の入った羽織と袴



【男】羽織袴(はおりはかま)とは、羽織(上着)と袴(ズボン型の和装)を組み合わせた、主に男性の最も格式の高い正装・礼装です。

江戸時代の武士の礼服が起源で、現代では主に結婚式(新郎など)や成人式、卒業式などのフォーマルな場で着用されます。

基本の構成と特徴:

・紋付羽織: 正式なものは、背中や袖など計5ヶ所に家紋が入ります。

・袴: 縞模様のものなどがあり、羽織の下に着る着物(長着)もセットで着用します。

【初心者の注意点】

・格式の使い分け: 最も正式なのは「黒五つ紋付羽織袴」です。場面の格式に合わせて、紋の数や色(黒か色紋付か)を選びましょう。カジュアルな集まりでは家紋のない羽織を選ぶこともあります。

21. 着流し (きながし)

着流し姿の男性イメージ画像
着流し姿


【男】着流し(きながし)とは、男性が和服を着る際に、羽織(はおり)や袴(はかま)をつけずに、着物(長着)と帯だけで着る、略式でカジュアルな着こなしのことです。

正装とは違い、普段着や家でくつろぐ時、または粋(いき)な外出着として楽しまれてきました。

女性の場合はこの「着流し」という呼び方はせず、「帯付き」というのが正式な呼び方になります。

浴衣の着こなしに似ていますが、浴衣は着流しとは分けて考えられます。シンプルで挑戦しやすいスタイルです。

22. 御召 (おめし)


【男女共通】(特に男性に人気)。御召(おめし)は、強くねじった絹糸を先に染めてから織る、とても格が高い高級な着物生地です。縮緬(ちりめん)のような細かい凹凸(シボ)と、シャリ感・ハリがある上質な風合いが特徴で、シワになりにくいのも利点です。

柄のないものや紋を入れたものはフォーマルな席にも着られ、柄のあるものは観劇や食事会などのおしゃれ着として幅広く楽しめます。

御召は織りの着物の中では最も格上とされています。合わせる帯や小物によって、普段着にも略礼装にもなるため、着ていく場所(TPO)に合わせて色柄や合わせるものを慎重に選ぶことが大切です。まずはシンプルな無地や柄から試すのがおすすめです。

【季節の分類:Seasonal Rules】

着物には「衣替え」のルールがあり、季節によって生地の仕立て方を変える必要があります。

季節ごとの着物イメージ
着物の季節感

23. 袷 (あわせ)


【共通】袷(あわせ)の着物とは、表地と裏地の二枚の生地を縫い合わせて作った、裏地付きの着物のことです。

裏地が全面についているため、風を通しにくく、保温性が高いのが特徴です。生地にしっかりとした厚みと重厚感があり、フォーマルからカジュアルまで幅広く使われます。

着用時期

肌寒くなる秋から春にかけて(主に10月〜5月頃)に着用するのが一般的です。


初心者が気をつけること

季節の使い分け: 袷は裏地があるため、6月と9月の「単衣(ひとえ)の季節」や夏の時期には着用しません。季節に合わせて、裏地のない単衣や透け感のある薄物(うすもの)と着物を使い分ける必要があります。

裏地(八掛)の確認: 裏地の色や柄(特に裾の裏側にある八掛/はっかけ)が、歩いた時などに少し見えることがあります。着こなしのアクセントになる部分なので、好みやTPO(時と場所、場合)に合わせて選びましょう。


24. 単衣 (ひとえ)


【共通】単衣(ひとえ)の着物とは、裏地(うらじ)のない一枚だけで仕立てられた着物のことです。

裏地(胴裏や八掛)が付いていないため、風通しがよく、軽くて涼やかな着心地が特徴です。見た目にも軽やかな印象になります。

着用時期

暑すぎず寒すぎない、初夏と初秋の季節の変わり目に活躍する着物です。一般的には、6月と9月に着用されるのが基本とされています。日本の四季に合わせて快適に着られるよう工夫された着物です。

初心者が気をつけること

季節の使い分けが大切: 単衣は裏地のない軽さが特徴のため、裏地付きの袷(あわせ)の着物(10月〜5月頃)と着用時期を厳密に使い分けます。

夏物との区別: 7月と8月の真夏には、さらに透け感のある「薄物(うすもの)」と呼ばれる着物を着用します。単衣はあくまで季節の変わり目用と覚えておきましょう。

ただし、近年は気候変動の影響で、必ずしも時期に厳密にこだわらず、その日の気温や体調に合わせて柔軟に単衣を選ぶ考え方も広まっています。とは言っても、結婚式などの正式な場では季節のルールに従った方が無難です。

25. 薄物 (うすもの) / 絽 (ろ)・紗 (しゃ)

【共通】薄物(うすもの)とは、**盛夏(7月・8月)**に着る、裏地がなく生地が薄く透け感のある夏専用の着物です。涼しさと風通しの良さを追求した、見た目にも清涼感のある和装です。

主な薄物の種類は以下の2つで、透け方や用途が異なります。

絽(ろ): 絹で織られた代表的な夏素材で、横段の透け感があるのが特徴です。清涼感があり、フォーマルな場(結婚式や茶会など)にも用いられます。

紗(しゃ): 絽よりもさらに透け感が強く、網目状(ネット状)に見える生地が特徴です。よりカジュアルな装い向きで、真夏の暑い時期にぴったりです。

初心者が気をつけること

着用時期: 薄物は7月・8月の真夏に着用するのが基本マナーです。6月や9月の季節の変わり目には、裏地のない単衣(ひとえ)の着物と使い分けましょう。

小物合わせ: 帯や帯揚げ、帯締めも、絽や紗などの透け感のある夏物を合わせて、涼しげにコーディネートするのが一般的です。


薄物着物は、見た目と着心地の「涼」を楽しむための、日本の夏の知恵が詰まった着物です。

【帯の種類:Obi Types】

女性と男性では、帯の種類、格、結び方が根本的に異なります。

帯の種類イメージ
女性の帯の種類

26. 袋帯 (ふくろおび)

【女】袋帯は、礼装用として使われる、最も格式の高い帯の一つです。表地と裏地を袋状に縫い合わせて仕立てられているのが特徴です。丸帯という重い帯を改良し、豪華さと軽さを両立させた帯として普及しました。

特徴と用途

・格式の高さ: 留袖(とめそで)や訪問着(ほうもんぎ)、振袖(ふりそで)など、結婚式や式典などの最も正式な場面で用いられる帯の定番です。

・豪華さ: 幅は約35cm、長さは約4.3m以上と長く、金糸などが使われ、華やかで豪華な柄が多いのが特徴です。

・結び方: 主に「二重太鼓結び(にじゅうたいこむすび)」という、お祝い事にふさわしい結び方で使われます。

初心者が気をつけること

・TPO(時と場所、場合): 最も格式の高い帯なので、小紋や紬といった普段着の着物には合わせません。フォーマルな場面や、柄によっては準礼装(セミフォーマル)の場面に合わせて選びましょう。

・結び方: 名古屋帯などに比べると、結び方が複雑な「二重太鼓」で結ぶことが多いため、着付けに慣れていないと難しく感じるかもしれません。着付けの練習をしたり、着付けサービスを利用したりすることをおすすめします。

袋帯は、着物姿を格調高く華やかに演出するための、大切なフォーマルアイテムです。

27. 名古屋帯 (なごやおび)

【女】名古屋帯は、着物用の帯の一種で、袋帯(ふくろおび)よりも簡単に結べるように工夫された帯です。大正時代に名古屋で考案されました。

特徴とメリット

・着付けが簡単: お太鼓結び(おたいこむすび)に必要な長さに最適化されており(約3.5メートル)、帯を巻く部分があらかじめ半分の幅に仕立てられている(名古屋仕立て)ため、初心者でも結びやすく、着付けの手間が大幅に減ります。

・用途が広い: 小紋(こもん)や紬(つむぎ)などの普段着の着物から、素材や柄によっては観劇や食事会などの略礼装(セミフォーマル)の場面まで幅広く使えます。

初心者が気をつけること

・最も正式な場には不向き: 留袖(とめそで)や振袖(ふりそで)などの最も格式の高い礼装には使えません。結婚式などの正式な場では、より格上の袋帯を選ぶ必要があります。

・種類がある: 帯芯(おびしん)を入れて仕立てる「九寸(きゅうすん)名古屋帯」や、帯芯を入れない「八寸(はっすん)名古屋帯(かがり帯)」など種類があります。着用シーンに合わせて選びましょう。

名古屋帯は、着物を手軽に楽しむうえで欠かせない、非常に便利な定番の帯です。

28. 半幅帯 (はんはばおび)

【女】半幅帯とは、一般的な帯の約半分の幅(15~17cm程度)で仕立てられた、細くて軽やかな帯のことです。

特徴とメリット

・カジュアルに最適: 小紋、紬、浴衣などの普段着の着物に合わせる、カジュアルな帯です。

・着付けが簡単: 帯枕(まくら)や帯揚げ(あげ)などの小道具を使わずに結べるため、着物初心者でも手軽に挑戦できます。

・締め付けが少ない: 軽量で締め付けが少なく、街歩き、お祭り、花火大会などの日常やレジャーシーンにぴったりです。

・種類: 一枚仕立ての「単帯(ひとえおび)」、袋状の「小袋帯(こぶくろおび)」の2種類があります。

初心者が気をつけること

フォーマルな場には不向き: 留袖(とめそで)や訪問着(ほうもんぎ)などの正式な和装には使えません。カジュアルな装い専用の帯として、TPO(時と場所、場合)に合わせて使い分けましょう。

コンパクトで自由な結び方が楽しめる半幅帯は、普段着で着物を楽しみたい方に特におすすめです。

29.角帯 (かくおび)

献上柄博多織の角帯

【男】角帯(かくおび)とは、男性用の着物(きもの)や浴衣(ゆかた)に欠かせない、細くてしっかりした帯のことです。

幅は8cm~11cm程度で、長さは約4mある、男性の和装(わそう)では最も一般的で正式な帯とされています。

・男性の基本: 男性は、礼装(れいそう)から普段着まで、ほとんどの着物や浴衣にこの角帯を使います。兵児帯(へこおび)という柔らかい帯もありますが、角帯のほうが格上です。

・特徴: 絹や綿などでしっかりと織られていて、丈夫で結びやすく、締めたときに形が崩れにくいのが特徴です。

・結び方: 「貝の口(かいのくち)」などの、男性特有の結び方(男結び)が一般的です。

初心者が気をつけること・選ぶポイント

・締める位置:
帯を締める位置は、女性の帯と違い、腰骨にしっかりかかるように比較的低い位置で締めます。正しい位置でしっかりと締めることで、着崩れを防ぎ、見た目も粋(いき)になります。

・素材の使い分け:
礼装(結婚式など): 絹織物などの角帯を選びましょう。
普段着・浴衣: 木綿や化繊(かせん)などの扱いやすい素材の角帯がおすすめです。

角帯は、男性の着物姿を引き締め、格調高く見せるための大切なアイテムです。まずは普段使いしやすい素材から挑戦してみると良いでしょう。

30. 兵児帯 (へこおび)

【共通】兵児帯(へこおび)は、綿やシルクなどの柔らかくて軽い素材で作られた帯です。締め付け感が少なく、長時間締めても楽なため、着物初心者や子どもにも人気があります。

生地が柔らかいので、巻き方や結び方が自由で、ふんわりとしたリボン結びなども簡単にできるのが特徴です。主に浴衣や普段着、カジュアルな小紋などに合わせて使われます。

兵児帯はカジュアルな帯なので、フォーマルな式典や正式な祝いの席には向きません。リラックスしたいシーンや、おしゃれ着として楽しむための帯だと覚えておきましょう。

手軽さとアレンジの豊富さが魅力なので、普段着や浴衣スタイルで幅広く楽しめます。下記の動画を参考にぜひ兵児帯に挑戦してください。↓

                結び方ナビ〜How to tie〜

カテゴリー3:着物の「部位」の名称(仕立てと着姿の理解)


このカテゴリーは、着付けを学ぶ上での「解剖学」です。特に「裄」と「身丈」は、着物(特に中古品やプレタポルテ)を購入する際に、自分のサイズに合うかを判断する最重要の用語です。

また、「おはしょり」は女性の着付けを象徴する用語であり、男性の「着流し(対丈)」との構造的差異を明確にする必要があります。

着物の部位解説イラスト

31. 裄 (ゆき)

【共通】着物(きもの)の裄(ゆき)とは、洋服でいう「袖丈(そでたけ)」に当たる、腕の長さの寸法のことです。

測る場所は、背中の中心(首の付け根)から肩を通り、手首のくるぶしまでを一直線に測ります。

この裄の寸法は、着物、長襦袢(ながじゅばん)、羽織、コートなど、全ての和装アイテムで非常に重要です。自分の体型にぴったり合った裄の着物を着ることで、見た目が美しく、動きやすく快適に着ることができます。長すぎたり短すぎたりすると、着崩れや所作の美しさに影響するため、和服の採寸で最も大切な部分の一つです。

着物の採寸イラスト

32. 身丈 (みたけ)


【共通】着物(きもの)の身丈(みたけ)とは、着物の肩の部分から裾(すそ)までの、縦の長さのことです。和服の採寸で最も基本となる寸法です。

【女性の身丈】

目安は自分の身長とほぼ同じ長さです。これは、着付けの際に帯の下で「おはしょり」という折り返し(余った生地をたくし上げる部分)を作るために、着丈(実際に着る長さ)よりも長く作られているためです。

【男性の身丈】

男性の着物は、おはしょりを作らずに着る「対丈(ついたけ)」が基本のため、身丈は「身長−25cm程度」を目安に、肩から裾までの長さ(つい丈)を基本とし、足元ぎりぎりにならないよう仕立てます。

身丈は、着姿の美しさや着付けのしやすさに直結するため、自分に合った正しい寸法を選ぶことが大切です。

33.おはしょり (おはしょり)

【女】おはしょりとは、着物の丈が長い場合に、腰の位置で余った布を折り上げて、帯の下に作る「折り返し」のことです。着物の長さを調整し、着姿を美しく見せる役割があります。

女性: ほとんどの着物で、このおはしょりを作るのが必須です。

男性: 着物や浴衣は、おはしょりを作らずに、身長に合わせた丈(対丈)で着るのが一般的です。

おはしょりは、和装を美しく整えるための、女性の着物ならではの工夫です。

34. 対丈 (ついたけ)

【男・女(浴衣など)】対丈(ついたけ)とは、着物の丈を自分の身長に合わせ、「おはしょり」(帯の下の折り上げ部分)を作らずにそのまま着る方法です。洋服のように着丈ぴったりで着るスタイルです。

対丈のポイント

・着付けが簡単: おはしょりを作る手間がないため、着付けの工程が減り、初心者でも挑戦しやすい方法です。

・着崩れしにくい: おはしょりがない分、動いても乱れにくく、家事や作業などで動きやすい実用性があります。

・男性: 着物、浴衣、長襦袢、コートなどは、基本的に対丈で仕立て・着用されます。

・女性: 丈の短いアンティークやリサイクル着物を活用したい場合や、カジュアルな普段着としてよく用いられます。

・シルエット: 余計なたるみがないため、すっきりとした縦長のシルエットになります。

気をつけるべきこと

裾の調整: おはしょりで長さをごまかせないため、着付けの際に裾の長さの調整(裾合わせ)が特に重要になります。裾が床につかないよう、鏡でしっかり確認しながら着付けることがポイントです。


対丈は、着物をより手軽に、カジュアルに楽しむための着方の一つです。

35. 袖 (そで)


【共通】着物において袖(そで)は腕を通す部分全体を指し、特に袖口から下に垂れ下がる袂(たもと)という袋状の部分が特徴的です。袖の縦の長さは袖丈(そでたけ)と呼ばれ、長くなるほど振袖(ふりそで)のように格が高くフォーマルな着物とされています。

自分の体に合った袖丈の寸法を正しく把握することが大切です。寸法が合っていないと、見た目の美しさだけでなく、着心地にも影響します。また、TPO(時と場所、場合)に合った袖丈を選ぶことも重要です。

36. 袖丈 (そでたけ)

【共通】袖丈(そでたけ)とは、着物の袖の「上から下までの縦の長さ」のことです。具体的には、袖のいちばん上から下までを測った寸法です。

女性の着物はここの長さで格や年齢を表し、標準的な袖丈は約49~50cmですが、袖が長くなるほどフォーマルな着物とされています。未婚女性の振袖はここが非常に長い(100cm前後) のが特徴です。


初心者が注意すべきこと
着物を選ぶ際や採寸時には、自分の体に合った袖丈の寸法を正しく把握することが大切です。寸法が合っていないと、見た目の美しさだけでなく、着心地にも影響してきます。TPO(時と場所、場合)に合った袖丈を選ぶことも重要です。

37. 袂 (たもと)

【共通】着物の袂(たもと)とは、袖の下側に垂れ下がっている、袋のような部分のことです。昔は手紙や小物を入れる簡易的なポケットとしても使われていました。

特に振袖(ふりそで)はこの袂が長いのが特徴です。また、「袂を分かつ(別れる)」などの慣用句にも使われる、着物ならではのデザインと機能性を持つ部分です。

38. 衿 (えり)

着物の衿イメージ画像
着物の衿


【共通】「衿(えり)」は、着物の首まわりを囲む細長い布の部分です。長襦袢(ながじゅばん)につける半衿(はんえり)と、着物本体の衿があり、衿芯(えりしん)を入れると首元がピンと美しくなります。衿の合わせ方や抜き具合で、着物姿の印象が大きく変わる大事なパーツです。

着物の衿の種類

・広衿(ひろえり):幅が広く、二つ折りにして使うもの。現在の多くの着物は広衿仕立て。

・撥衿(ばちえり):幅が中央から端に向かって広がる形状。あらかじめ二つ折りになっている衿。

・棒衿(ぼうえり):幅が細く、全体が均一な寸法になっている衿。

衿合わせと着付けの印象

・衿の抜き具合や合わせ方によって、着物の印象や雰囲気が大きく変わります。

・襟元を深く抜くことで色っぽい印象になり、浅めにするときちんとした印象に整います。

半衿や重ね衿(伊達衿)の色や柄を工夫すると、首元のおしゃれや個性を演出できます。

39. 衽 (おくみ)


【共通】衽(おくみ)は、着物の前側(前身頃)に縦に縫い付けられている、半幅の布のことです。この布があるおかげで、着物の前をしっかり重ねて着ることができ、前側の身幅をきれいに整えてくれます。

着物を機能的に、そして美しく着るために欠かせない大事なパーツと覚えておくと良いでしょう。

40. 背縫い (せぬい)


【共通】「背縫い(せぬい)」は、着物の後ろ側を真ん中で縫い合わせている線(縫い目)のことです。着物全体の形を安定させ、着崩れを防ぐ大切な役割があります。

着物を着たときに、この背縫いが背中の真ん中にまっすぐ通っていると、見た目がとてもきれいです。

昔から「正しい心でいること」や「魔除け」の意味も込められた、大事な部分です。

カテゴリー4:着付けに必要な「小物」(着るための準備)


初心者を挫折させる第二の関門が、この「小物の多さ」です 。ここでは用語を「①レイヤー(肌着・襦袢)」と「②構造を作る道具(紐・板)」に分け、それぞれが「なぜ必要なのか」を解説します。

【レイヤー(肌着・襦袢):Layering Items】

41. 襦袢 (じゅばん) / 長襦袢 (ながじゅばん)

【共通】襦袢(じゅばん)とは、着物を汗や汚れから守り、着姿を美しく整えるための「和装のインナー」の総称です。着物とほぼ同じ形の長襦袢(ながじゅばん)は、肌襦袢(肌着)の上に着る、和装の必須アイテムです。

長襦袢は、袖口や襟元から色や柄が少し見えるため、半衿(はんえり)を付けて着物とのコーディネートも楽しめます。

【初心者の注意点】
必ず着用する: 着物本体を汚れから守り、長持ちさせるために、肌襦袢(肌着)の上から長襦袢を必ず着用しましょう。

季節の使い分け: 長襦袢にも、裏地付きの袷(あわせ)用(10月~5月頃)と、裏地のない単衣(ひとえ)用(6月・9月)など、着物と同様に季節に合わせて素材を使い分けることが大切です。

42. 肌襦袢 (はだじゅばん)


【共通】肌襦袢(はだじゅばん)とは、着物を着る時に素肌に直接着る、和装用の肌着のことです。

役割: 最大の役割は、汗や皮脂がその上に着る長襦袢や大切な着物本体に付くのを防ぎ、着物の汚れや傷みを軽減して長持ちさせることです。

特徴: 洗濯しやすい綿素材などが主流で、上下が分かれたタイプや、ワンピース型のスリップタイプなどがあります。

初心者への注意点: 浴衣など一部例外を除き、着物を着る際は長襦袢のさらに下に、この肌襦袢を必ず着用するのが基本です。着付けの順番の一番最初に身につける大切なアイテムだと覚えておきましょう。

43. ステテコ (すててこ)

【共通】ステテコ(すててこ)とは、着物や浴衣の下に着用する、ひざ下丈の和装用の下ばき(下半身の肌着)のことです。

役割と特徴
汗対策: 足の内側の汗や湿気を吸い取り、大切な着物や長襦袢を汚れや傷みから守る汗取りの役割を果たします。

裾さばき: 裾の滑りが良くなるため、歩く際の裾さばきが向上し、動きやすく快適な着心地になります。

着用時期: 吸湿性の高い素材が主流で、特に夏の着物姿を涼しく快適に整えるために活躍します。

男女兼用: もとは男性の和装で使われていましたが、最近は女性用のステテコ(レース付きなど)も増え、裾よけの代わりに肌襦袢と合わせて履く、便利な和装小物として人気があります。

活用シーン: 盛夏(7月・8月)の暑さ対策として、積極的に活用するのがおすすめです。

44. 半衿 (はんえり)

半衿イメージ画像
刺繍入り半衿(都粋ECショップ


【共通】半衿(はんえり)は、着物を着る時に長襦袢(ながじゅばん)の襟元に縫い付ける「付け替えできる襟カバー」のことです。

役割と重要性

印象アップ: 顔周りに一番近いため、着物姿の印象を大きく左右する大切なオシャレアイテムです。

汚れ防止: 汗や化粧などの汚れが、長襦袢や着物本体に付くのを防ぐ「汚れガード」の役割も担います。

オシャレ: 白無地はフォーマルな場で、色柄や刺繍入りはカジュアルな普段着や季節のコーディネートに活用できます。

初心者が注意すべき点

定期的な付け替え: 汚れやすい部分なので、定期的に付け替えて清潔感を保つのが美しく着こなすための大事なポイントです。

男女の違い: 男性も長襦袢に半衿(主に白)を付けますが、女性は色柄や刺繍などでより幅広く華やかなコーディネートを楽しむことができます。

45. 衿芯 (えりしん)


【共通】衿芯(えりしん)は、着物の下に着る長襦袢の衿元に差し込む細長い芯状の補助具です。衿元をピンと立たせ、型崩れやシワを防いで着崩れしにくくする役割があります。

着物姿を美しく引き締め、特にフォーマルな着物には欠かせない、着付けの仕上がりを左右する重要なアイテムです。

男性着物は女性ほど衿芯にこだわる必要はありませんが、スマートに着たい場合や正装では芯入りも選択肢となります。普段着なら特に芯なしでも問題ないです。

失敗例:衿芯の幅や長さが合っていないため、衿元が盛り上がったり、波打ったり、浮いてしまいます。衿芯は自分の襦袢や半衿のサイズに合わせて選び、差し込み方はゆるすぎずピッタリに調整しましょう。

46. 足袋 (たび)


【共通】足袋(たび)は、和装時に履く伝統的な靴下で、草履や下駄の鼻緒を挟めるよう親指と他の指が分かれた「二股構造」が特徴です。かかとの「こはぜ」で留めます。着物姿に不可欠な小物で、「履き物を快適に使う」「礼装のマナーを守る」ために重要です。

着物や浴衣の着付け時には、着付けの手間と着姿の乱れを防ぐために、最初に履くのが基本です。

失敗例:着物や長襦袢を身につけて帯を締めてしまうと、かがんで足袋を履く動作によって、整えた着物の裾や身頃が乱れたり、シワが寄ったりします。

【美しい着姿を作る道具:Structural Tools】

47. 腰紐 (こしひも)

【共通】着付けの過程で、襦袢や着物を固定するために使う紐 。【女】は「おはしょり」を作るために、腰の高い位置で着物を固定するのに必須です。

【共通】腰紐(こしひも)とは、着物や長襦袢を体に固定し、着崩れを防ぐために腰や胸元などに結ぶ細い紐状の和装小物です。主な役割は、長襦袢や着物の身頃をしっかり固定すること。

【女】はおはしょり(腰部分の折り返し)を整えることです。

また、帯結びの仮留めなど、幅広い用途で使われる、着付けには欠かせない「縁の下の力持ち」のような存在です。

綿・化繊・ウール・モスリンなど、柔らかく結びやすい布でできているのが一般的です。補助ベルトや伸縮素材など現代的なタイプもあり、体型や着心地の好みに応じて選べます。

48. 伊達締め (だてじめ)


【共通】伊達締め(だてじめ)は、着物や長襦袢の襟元やおはしょり(腰まわりの折返し部分)を美しく整え、着付けを安定させる幅広の紐状の小物です。着崩れを防ぎ、前身頃のラインをきれいに保つ役割があり、美しい着姿の「土台作り」に欠かせない重要なアイテムです。

正絹、博多織、麻、化繊、伸縮性ベルトなど多様で、伝統的な博多織や、簡単に巻けるマジックテープ付きのものもあります。

長襦袢や着物の上から一本ずつ使用するのが一般的で、胴まわりに平行に巻き、余り部分は間にしまい込みます。

49. 帯板 (おびいた) / 前板 (まえいた)

帯関連小物の画像


【共通】帯板(おびいた)・前板(まえいた)は、帯を巻く際に帯の前面部分へ入れる薄い板状の小物です。主な役割は、帯にしわが寄るのを防ぎ、ピシッと張りのある美しい形を保つことで、着物姿をすっきりと見せることです。

「前板」は帯の前側(胴まわり)に使い、ほとんどの着物で着用して着崩れを防ぎます。「後板(うしろいた)」は振袖や浴衣などの飾り結びの際に後ろに使うことはありますが、一般的なお太鼓結びでは必要ありません。

50. 帯枕 (おびまくら)


【女】帯枕(おびまくら)とは、お太鼓結びを美しく仕上げるために不可欠な和装小物です。帯の後ろ側に差し込むクッションの土台となり、帯山にふくらみや高さを出して、帯の形を立体的に整えます。

また、帯結びを背中にしっかり固定し、着崩れを防ぐ役割もあります。帯枕は帯揚げで包んで見えないようにするのが一般的で、着物姿の後ろ姿の美しさを左右する重要なアイテムです。

男性は使用しません。

カテゴリー5:装いを完成させる小物と結び方(仕上げと応用)


カテゴリー4が「隠す」道具だったのに対し、こちらは「見せる」仕上げの道具です。これらは機能(帯を固定する)と装飾を兼ねています。

帯揚げ、帯締め、帯留めのイメージ画像


51. 帯締め (おびじめ)


【女】帯締め(おびじめ)とは、帯結びを固定し、着付けを安定させるために帯の中央に締める紐状の和装小物(主に女性用)です。

主な役割は、帯の形を保ち、着崩れや帯のゆるみを防止することです。これと同時に、着物コーディネートのアクセントカラーとしても非常に重要で、全体の印象を引き締めたり、華やかさを演出したりする装飾的な役割も持っています。

組紐(くみひも)などさまざまな形状や太さのものがあり、お太鼓結びの際には最後に帯の上から結んで着付けを完成させます。機能性と装飾性を兼ね備えた、着物姿には欠かせない小物です。

52. 帯揚げ (おびあげ)

【女】帯枕 を包んで隠し、帯の上辺を彩る布 。帯枕を背中に固定する役割も持ちます。

帯揚げ(おびあげ)は、帯枕を包みながら帯の上辺を飾り、お太鼓結びの形をきれいに整えるために使う細長い布です。

主な役割は、
・お太鼓結びなどで帯枕を見えないように隠し、帯周りを美しくまとめる。
・帯を安定させる実用性に加え、着物コーディネートのアクセントとして装飾的な意味合いも持つ。

着物や帯の格調を表現し、着姿の完成度を高める重要な和装小物です。色柄が豊富なので、TPOや季節に合わせて選ぶ楽しみもあります。

53. 帯留め (おびどめ)


【女】帯留めは、帯締めに通して使う着物用のアクセサリーで、帯の装いを華やかにするための小物です。主に帯締めの上につける装飾品で、ベルトのバックルのようなイメージを持つアイテムです。

もともとは帯結びの固定やほどけ防止といった実用的な役割もありましたが、現在はファッションとして着物コーディネートのアクセントとして使われます。これを付けることで、着物や帯、全体の印象が変わります。

使い方は、一般的に三分紐(帯留め用の細い帯締め)に通して使用します。デザインや素材は幅広く、季節感や個性を表現でき、気軽に取り入れられる楽しみがあります。着物や帯の格に合わせて選ぶのが良いですが、必ずしもつける必要はありません。

54. お太鼓結び (おたいこむすび)


【女】お太鼓結びは、名古屋帯や京袋帯に用いられる最も一般的な結び方で、背中に四角い「太鼓」の形を作るものです。礼装では「二重太鼓」、カジュアルでは「一重太鼓」にします。

初心者が押さえるべきポイント

・必要な道具: 帯枕、帯締め、帯揚げ、仮紐などが必須です。

・手順: 前で結んでから後ろに回す「前結び」と、後ろで結ぶ方法があります。腕が回しにくい場合は、前結びを試してみるのがおすすめです。まずは全体の流れを把握することが大切です。

・帯選び: 初心者は、上下や柄の向きがないシンプルな帯や、標準的な長さの帯を選ぶと扱いやすいです。

よくある失敗と解決策

・太鼓が斜めになる: 帯の布目やラインが揃っているか確認しながら結びましょう。

・帯が緩む・崩れる: 帯締めの位置や締め方を工夫し、帯枕の角度を安定させることが重要です。

「うまく形にならない」「緩む」といった悩みは多いですが、動画やテキストを見てポイントを押さえつつ、何度か練習することで必ずきれいに結べるようになります。焦らず、ご自身がやりやすい方法を見つけて練習を重ねてみてください。

55. 男結び (おとこむすび) / 貝の口 (かいのくち)


【男】角帯で結ぶ、最もスタンダードな結び方。「貝の口(かいのくち)」とも呼ばれ、平たくて崩れにくいのが特徴です。

名前は、帯を結んだ形が二枚貝のように見えることに由来しています。江戸時代から続く、男性の帯結びの定番で、「男結び」と呼ばれるのはそのためです。



着物用語辞典 索引(55項目・五十音順)

【あ行】

【か行】

【さ行】

【た行】

【な行】

【は行】

【ま行】

【や行】

【ら行】


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