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2025年07月10日

男の着物、何から揃える?まず揃えたい基本の小物と選び方を徹底解説

男の着物の小物類

男性の着物姿を粋に、そして快適に彩る「小物」たちの存在をご存知ですか?

着物本体だけでなく、肌着から帯、足元、さらには装飾品に至るまで、選び方ひとつで印象がガラリと変わる奥深さに迫ります。

初心者だからこそ着物をより自由に、自分らしく楽しむ。そのための秘訣は、この小さな名脇役たちに隠されているんです。

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はじめに
1. 肌着・下着類 ― 着心地と美しさの土台
 1-1.襦袢(長襦袢)とは
 1-2.半襦袢
 1-3.ステテコ
 1-4.夏着物に半襦袢ステテコをお勧めしない理由
2. 帯(おび) – 着物を引き締める要
 
2-1. 角帯(かくおび) ― 男着物の基本スタイル
  2-2. 兵児帯(へこおび) ― 柔らかさと軽さが魅力
3. 羽織紐(はおりひも) – 羽織のアクセント
 
3-1.羽織紐の基本的な役割
      3-2.種類と素材
   3-3.結び方と印象の違い
4. 足袋と履物 – 和装の足元を支える
 
4-1. 足袋(たび) – 和装の基本インナー
  4-2. 履物(はきもの) – 草履、雪駄、下駄の違い
  4-3. 履物の選び方とマナー
5. 実用小物 – 機能と粋を両立
 
5-1. 懐紙入れ(かいしいれ) – 大人のたしなみアイテム
  5-2. 煙草入れ・巾着袋 – 伝統美と実用性
  5-3. 信玄袋(しんげんぶくろ) – 男性和装の定番バッグ
6. 装飾小物 – 個性を演出するアイテム
 
6-1. 扇子(せんす) – 実用と格式の象徴
  6-2. 根付(ねつけ) – 小物に添える遊び心
  6-3. 季節感を取り入れる工夫
おわりに

はじめに

着物というと、どうしても「格式が高くて難しそう」「着こなすのに手間がかかりそう」といったイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、実際には現代のライフスタイルに合わせて、より気軽に楽しめる男の着物スタイルも数多く存在しています。

そんな中で、着物を格好よく、快適に着こなすために欠かせないのが「小物」です。帯や羽織紐のように見た目の印象を決定づけるものから、襦袢や足袋のように着心地や清潔感に関わるものまで、小物は着物の世界において非常に重要な役割を担っています。

特に男性の着物は、色味や柄が控えめな分、小物の選び方ひとつで全体の印象が大きく変わります。粋で品のある着こなしを実現するには、小物選びがまさに「勝負どころ」と言っても過言ではありません。

本記事では、男の着物に欠かせない代表的な小物を、肌着から装飾品まで幅広く紹介し、それぞれの役割や選び方について詳しく解説していきます。これから着物を始めてみたい方、あるいはすでに着物を楽しんでいる方にも、小物選びの参考にしていただければ幸いです。

1.  肌着・下着類 ― 着心地と美しさの土台

着物を美しく、そして快適に着こなすためには、見えない部分にこそ気を配る必要があります。

その基礎となるのが「肌着・下着類」です。男性の着物において、肌着は直接肌に触れる部分であり、汗を吸い、形を整え、着物を清潔に保つ役割を果たします。

1-1.襦袢(じゅばん)とは

襦袢は、着物の内側に着る長めの下着のことで、衿元や袖口から少しだけ見えるため、装いの一部としても重要な役割を持ちます。 ― 着物の下のもう一つの“着物”と言われるゆえんです。

長襦袢(ながじゅばん)は着物と同じ丈で、上半身から足元までを覆います。その役割と特徴は、

  • 汗や皮脂を吸収し、着物本体を汚れから守る
  • 襟元の形を整える(特に半衿が見えるため美しさが重要)
  • 着付けをしやすくする滑りやすい素材が多い

素材には木綿、麻、ポリエステル、絹などがあり、洗濯のしやすさや着心地で選ぶと良いでしょう。普段使いには洗える化繊が便利です。

ポリエステルの襦袢てどうなの?

以前はポリエステルは一般的に天然素材に比べて通気性が劣るため、暑く感じやすいという意見が多く見られました。

近年は吸水速乾性や通気性に優れた高機能ポリエステル素材(例:セオアルファなど)が登場し、従来のポリエステルよりも涼しく快適に着られると評価されています。

高品質なポリエステル着物は、風も通りやすく、体感温度が下がる工夫がされているものもあります。一度お店などで手に取って確かめるのが良いと思います。

麻の襦袢のメリット

着物を始めたばかりの男性にとって、麻の襦袢は非常に実用的なアイテムです。

私は麻の襦袢を第一にお勧めします。理由はいくつもあります。

快適性が抜群なのが最大のメリット。麻は通気性に優れ、汗をかいてもすぐに乾くため、暑い日でも快適に着物を楽しめます。特に男性は体温が高めなので、この特性は大きな利点となります。

着用期間が長いことも魅力です。「夏だけのもの」と思われがちですが、首都圏の気温推移を考えると4月下旬〜11月上旬に及ぶ年もありえます。

基本的には盛夏中心ですが、春秋の暑い日にも適用可能と考えて大丈夫です。最近の気候変動で暑い日が増えているため、麻襦袢の出番はさらに多くなっていくものと思います。

お手入れが簡単で、初心者にも扱いやすい素材です。色付きや織り方を選べば、真夏以外の季節にも違和感なく着用できます。

出張先の地方で着物を着る機会の多いある呉服店の代表が1年中麻の襦袢を愛用されているとおっしゃっていました。たくさん汗をかいてもホテルの浴室で冷水のシャワーを掛けて干しておけば、一晩で乾いて翌日も快適で便利だからだそうです。

「麻はシワがつきやすいので初心者は木綿襦袢の方が管理しやすい」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、洗濯後にしっかりシワを延ばして干せばそれほどきになることはないのが私自身の経験です。

フォーマルな場では絹の襦袢を選ぶ場合も多いですが、普段着やカジュアルな場面では麻の襦袢が重宝します。着物生活を快適に始めたい男性には、まず麻の襦袢から揃えることをおすすめします。

1-2.  半襦袢

半襦袢は、上半身のみを覆う短い襦袢で、裾が短く軽快なため、普段着や夏場に特に人気です。裾除け(すそよけ)やステテコと組み合わせて着用することで、長襦袢と同等の役割を果たします。その特徴は、

  • 着脱が簡単で、洗濯も楽
  • 気温が高い時期に蒸れにくい
  • 初心者にも扱いやすい

見た目の一部として衿の清潔感が問われるため、半衿(はんえり)と呼ばれる布を付けて使用します。

1-3.  ステテコ

ステテコは、ズボン下として着用する和装用のインナーで、太ももから足首にかけてを覆います。通気性が良く、着物の裾さばきを滑らかにし、夏場でも快適に過ごせます。その特徴は、

  • 汗を吸って蒸れを防ぐ
  • 脚さばきがよくなり、着物がまとわりつかない
  • 動きやすく、日常の和装にも最適

最近では、麻素材や吸湿速乾素材の高機能ステテコも登場しており、季節や用途に応じて選ぶと快適です。


1-4.  夏着物に半襦袢ステテコをお勧めしない理由

使い勝手の良い半襦袢とステテコですが、夏の透け感のある着物(絽や紗など)と組み合わせることは、着物初心者の男性にはお勧めしません。

最大の理由は下着のラインが透けて見えることです。透け感の強い夏着物では、半襦袢とステテコの切り替え部分や裾のラインが外から見えてしまい、着姿の美しさが大きく損なわれます。特に白や淡い色の着物では、この問題が顕著に現れます。

また、着物は本来「一枚の長襦袢」で全身を包むことで、体のラインをなだらかに整え、美しい着姿を作り出します。半襦袢とステテコでは胴から下の部分に継ぎ目ができ、着物表面に不自然な影や段差が生じてしまいます。

さらに、お茶席やフォーマルな場では、下着が透けて見えることがマナー違反とされる場合もあります。

夏の透ける着物には、麻や絽などの夏用素材の長襦袢を着用するのが基本です。涼しさを重視する場合は、透けにくい色や素材の着物を選ぶことをお勧めします。


肌着や下着類は、一見地味ながらも着物を長持ちさせ、気持ちよく着るためには欠かせない存在です。しっかりと選んで、自分に合った着心地を見つけていくことが、着物生活を長く楽しむコツでもあります。

2. 帯(おび) – 着物を引き締める要

着物の印象を大きく左右するアイテムのひとつが「帯」です。特に男性の着物は色や柄が控えめなことが多いため、帯の選び方ひとつでコーディネート全体の雰囲気が決まります。帯は着物をしっかりと固定し、シルエットを整えると同時に、粋さや品格を演出する大事な役割を担っています。

2-1. 角帯(かくおび) ― 男着物の基本スタイル

博多織の角帯の写真
博多帯

角帯は、もっとも一般的な男物の帯で、幅が約10cm程度、長さが4m前後の帯です。硬めの素材で作られており、シャキッとした見た目が特徴です。きちんと感のある印象で、フォーマルからカジュアルまで幅広く使われます。

正絹の魅力:フォーマルから普段使いまで

帯の素材として最高級とされる「正絹(しょうけん)」は、蚕の繭から作られた天然絹糸100%の織物です。独特の光沢、なめらかな手触り、優れた耐久性が特徴です。

高級感とフォーマル適性

正絹の帯は、しっとりとした風合いと美しいドレープ性で高級感を演出し、装いに上品な満足感を与えます。結婚式や披露宴、茶会、式典など、格式高いフォーマルな場に最適とされ、着用者の品格と相手への敬意を示します。また、染色性に優れ、友禅染や西陣織などの伝統工芸品にも多く用いられています。

「フォーマル向け」という印象が強い正絹ですが、紬や小紋柄など、種類によっては普段使いにも適しています。美しい光沢となめらかな手触りは普段使いでも健在で、天然素材ならではの通気性も日本の気候に適しています。

ただし、水洗いには向かず、専門のクリーニングが必要です。着用後は陰干しし、着物と同様に、たとう紙に包んで保管、定期的な風通しと防虫剤の使用で長く愛用できます。

正絹は、その高級感と美しい特性から、帯としての最高級素材としてフォーマル・普段使いの両方で魅力を発揮します。適切なお手入れで、一生ものの逸品として長く愛用できるでしょう。

綿、麻、樹皮などの天然素材やポリエステル

帯の素材として、綿、麻、樹皮などの天然素材やポリエステルが挙げられます。これらの素材は、普段使いに適しており、自宅で洗えるタイプも多いため、手入れがしやすいという利点があります。

綿は肌触りが良く吸湿性に優れているため、暑い季節や日常着として人気があります。

麻は通気性が高くシャリ感があり、夏の帯として最適です。

「科布」「藤布」「葛布」などといった樹皮繊維は、いずれも「原始布」や「古代布」と呼ばれ、木綿や絹が普及する以前から日本各地で生活用品や衣類の素材として使われてきました。

特に夏帯としては、これらの自然素材がもつ通気性や独特の風合いが好まれる素朴な魅力があります。

ポリエステルはシワになりにくく、速乾性があり、自宅での洗濯が可能なため、現代のライフスタイルに合わせた手軽な帯として選ばれることが多くなりました。

これらの素材の特性を理解することで、帯を選ぶ際の参考になり、より快適でおしゃれな着物ライフを楽しむことができます。

角帯の代表的な結び方

  • 貝の口結び:男性の着物や浴衣の帯結びとして最も一般的で、シンプルながらも洗練された粋な印象を与えます。特に普段使いの着物や浴衣に最適で、結び崩れしにくく、長時間着用しても快適です。
  • 一文字結び:男性着物で最も格式高い帯結びです。帯が水平に結ばれ、凛とした品格と落ち着きを与えます。

    結婚式や式典などのフォーマルな場に最適で、礼装としての着物を格上げします。シンプルながらも、着る人の品格や着物の素材の良さを際立たせ、男性らしい潔さと粋を表現します。

    慣れれば結び方は比較的簡単ですが、美しく整えるには帯の張りや締め加減が重要です。これは単なる帯結びではなく、男性着物における礼儀と美意識を象徴する、基本にして究極の小物使いと言えるでしょう。
  • 浪人結び:江戸時代の浪人たちが好んで用いたとされる男物の帯結びです。刀を差す際に邪魔にならず、着崩れしにくい実用性から広まった、という説もありますが、史料では「浪人結び」という呼称自体が幕末以降の俗称で、実際は現代の創作名称という指摘もあります。

    複雑な装飾がなく、着物初心者でも簡単に結べます。飾り気のないシンプルな結び方が、潔さや粋な雰囲気を醸し出します。

    帯がしっかり締まり、動きやすく、着崩れしにくいです。普段着からカジュアルな着物、浴衣まで幅広く合わせられ、ツウな着物好きに人気です。
男の着物浪人結びのイラスト
浪人結び

2-2. 兵児帯(へこおび) ― 柔らかさと軽さが魅力

兵児帯は、柔らかくふんわりとした帯で、浴衣に合わせるなど主にカジュアルな場面で使用されます。初心者でも簡単に結ぶことができ、最近では若い世代や着物初心者の男性にも人気なようです。

特徴:

  • 締め心地が軽く、リラックス感がある
  • 結び方に個性を出しやすい
  • 浴衣や普段着の着物にぴったり

素材にはポリエステルやガーゼのような軽い布地が使われることが多く、季節感を演出するアイテムとしても優れています。

帯の選び方と印象

帯は「色」「素材」「柄」で印象が大きく変わります。着物が無地であれば柄物の帯でアクセントを加えると華やかに。逆に、柄の多い着物には無地やシンプルな帯でバランスを取るのがポイントです。

TPOに合わせた帯選び:

場面帯の種類結び方
結婚式や式典正絹の角帯一文字結び
街着や観劇博多織や洒落帯
夏の祭りや散策兵児帯やカジュアルな角帯

帯は、着物姿の「腰回り」を決定づける重要なパーツです。結び方を練習することで、より着物を自分のものとして楽しめるようになります。


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3. 羽織紐(はおりひも) – 羽織のアクセント

羽織紐(はおりひも)は、羽織(はおり)と呼ばれる着物の上に羽織るジャケットのような衣服の前を留めるための紐です。

実用性はもちろんのこと、男着物のコーディネートにおいて“粋”や“個性”を演出する、重要なアクセントになります。

正装用の羽織紐

3-1. 羽織紐の基本的な役割

羽織紐の主な目的は、羽織が風でめくれたり、バサバサと開いてしまったりするのを防ぐこと。結び目の形や紐の素材によって、さまざまな表情を見せるため、着こなしの中でさりげなく個性を出すことができます。

羽織紐は、羽織の前身頃にある「乳(ち)」という部分に引っかけて使用します。

3-2. 種類と素材

羽織紐には、形や素材の違いによっていくつかのタイプがあります。以下に代表的なものを紹介します。

1. 丸打ち(まるうち):

  • 紐が丸く編まれており、しっかりした印象
  • もっともオーソドックスで、フォーマルからカジュアルまで対応

2. 平打ち(ひらうち):

  • 平らに編まれた形で、やや柔らかく軽やかな印象
  • カジュアルな羽織に適している

3. 房付き(ふさつき):

  • 両端に房(ふさ)が付いており、華やかさを演出
  • 伝統的なスタイルによく合う

4. 飾り羽織紐・組紐(くみひも):

  • 色や編み方に工夫を凝らしたおしゃれ用
  • 現代的なスタイルやモダン着物にぴったり

素材としては、正絹(しょうけん)や綿、ナイロンなどがあります。正絹の羽織紐は光沢があり、格式高い場面に適しています。

3-3. 結び方と印象の違い

羽織紐の結び方にもいくつかの種類があり、それぞれの形に意味や雰囲気があります。

  • 一文字結び:シンプルながらも格調高い一文字結びは、紋付羽織袴のようなフォーマルな装いに最も適しています。結び目が平らで安定しているため、上から羽織を着用しても着崩れしにくく、すっきりとした印象を保てます。

    一文字結びは、男性の着物姿をより一層引き立てる、基本でありながらも奥深い帯結びです。
  • 喧嘩結び:羽織紐の「喧嘩結び」は、結び目が固く解けにくく、小ぶりで粋な印象を与える結び方です。その名前の通り、少しやんちゃで遊び心のある、粋な印象を与えます。

    普段使いの着物や、友人との食事、ちょっとしたお出かけなど、リラックスした雰囲気の中で着物を楽しみたい時に最適です。粋でいなせな着こなしを好む方には特におすすめの結び方と言えるでしょう。

結び方を工夫することで、同じ羽織紐でも違った印象に見せることができるのが魅力です。

羽織紐は小さなパーツではありますが、全体の印象を大きく左右するセンスの見せどころです。羽織と組み合わせて、さりげないおしゃれを楽しんでみましょう。

4. 足袋と履物 – 和装の足元を支える

着物姿の足元は、全体の着こなしの完成度を左右する重要なポイントです。特に「足袋(たび)」と「履物(草履・雪駄・下駄など)」は、和装ならではの要素として、見た目だけでなく歩きやすさや快適さにも大きく関わってきます。

この章では、男の着物に欠かせない足元の小物について詳しく解説します。

4-1. 足袋(たび) – 和装の基本インナー

足袋は、足を包み込む白い布製の靴下のようなもので、親指とその他の指が分かれているのが特徴です。和装の際には基本的に足袋を履くことがマナーとされており、フォーマルでもカジュアルでも欠かせません。ら

種類と特徴:

1. 白足袋(しろたび):

  • 最も一般的でフォーマルな場面に適した足袋
  • 結婚式、茶会、公式行事などに必須

2. 色足袋・柄足袋:

  • カジュアルな装いにおすすめ
  • 季節や着物の色に合わせて楽しむことができる

3. ストレッチ足袋:

  • 伸縮素材で履きやすく、日常使いに便利
  • 洗濯も簡単で初心者に最適

足袋は、サイズをきちんと合わせることが重要です。ぶかぶかだと見た目が悪く、歩きにくくなるため、フィット感を重視しましょう。

4-2. 履物(はきもの) – 草履、雪駄、下駄の違い

和装用の履物にはいくつか種類があり、それぞれTPOやコーディネートによって使い分けます。

1. 草履(ぞうり):

  • 台が柔らかく、鼻緒が太めで履きやすい
    硬質ウレタン台など多様化が進んでいます
  • 畳地や革張りなどがあり、フォーマルにも対応
  • 足元がすっきり見えるため、上品な印象に

2. 雪駄(せった):

  • 畳表に皮底が付いた男性向けの履物
  • カジュアルからやや格式のある場まで幅広く使用可
  • パチパチと音を立てながら歩くのが粋とされることも

3. 下駄(げた):

  • 木製で歯があるタイプ。風通しがよく、夏に最適
  • 浴衣や夏のカジュアルな着物によく合う
  • 長時間歩くにはやや不向きだが、独特の風情が魅力
男物草履・下駄

4-3. 履物の選び方とマナー

着物を着る上で足元は重要な要素です。足袋を着用する場合、一般的に草履や雪駄が基本的な履物となります。下駄は素足で履くことが多く、よりカジュアルな場面で用いられます。ただ、下駄を白足袋で履くフォーマル例(京都祇園祭の長刀鉾囃子方など)もあります。

草履や雪駄を選ぶ際には、まず鼻緒が足に合っているかどうかが非常に重要です。鼻緒がきつすぎると痛みが生じ、緩すぎると歩きにくくなります。また、台のサイズも確認しましょう。大きすぎるとバランスを崩しやすく、見た目も不格好になることがあります。

色や素材の選び方には、着物や帯とのバランスを意識することが大切です。着物の色柄が華やかな場合は、落ち着いた色合いの履物で全体を引き締めると良いでしょう。逆に、着物がシンプルな場合は、履物でアクセントを加えることも可能です。

素材も様々で、フォーマルな場では革や布製のものが、カジュアルな場では竹やラフィアなどの素材も選べます。季節感を取り入れることも、おしゃれな着こなしのポイントになります。

足元は、歩き方や姿勢にも大きな影響を与えます。自分の足に合った足袋と履物を選ぶことで、見た目だけでなく心地よさも大きく変わってきます。

5. 実用小物 – 機能と粋を両立

着物には洋服と違ってポケットがありません。そのため、実用性を補いつつ、和装らしい美意識や“粋”を表現するのが「実用小物」の役割です。

この章では、男性の着物スタイルに欠かせない、便利でおしゃれな実用小物について紹介します。

5-1. 懐紙入れ(かいしいれ) – 大人のたしなみアイテム

懐紙入れは、和紙でできた懐紙(かいし)を収納するための布製のケースです。懐紙とは、食事の際の口元をぬぐったり、器を拭いたり、急なメモ紙として使ったりと、多目的に使える紙です。茶道を嗜む方にはおなじみのアイテムですが、日常の和装シーンにもおすすめです。

ポイント:

  • スマートな印象を与える
  • 革製や布製など素材も豊富
  • 名刺入れや財布代わりに使う人も多いのです
    ビジネス用の名刺入れにはサイズの問題で不向きかもしれませんのでご注意を

5-2. 煙草入れ・巾着袋 – 伝統美と実用性

煙草入れ:

  • 名前の通り煙草を入れるための袋だが、今では小物やスマホ、鍵などを入れるミニポーチとしても活用
  • 革や帆布製など種類豊富で、ベルトに吊るして腰につけるスタイルも人気

巾着(きんちゃく):

  • 小さな袋型のバッグで、財布・スマホ・鍵などを収納
  • 着物姿と相性がよく、シンプルなものから派手な柄物まで種類も多彩

5-3.  信玄袋(しんげんぶくろ) – 男性和装の定番バッグ

信玄袋は、持ち手がついた四角い形状の布製または革製のバッグです。シンプルながら容量もあり、着物に合わせるバッグとして定番の一つです。

特徴:

  • カジュアルからセミフォーマルまで幅広く使える
  • 開口部が紐で絞れるタイプが多く、防犯性も高め
  • 着物の雰囲気に合わせたデザイン選びが楽しい

5-4. 素材としての印傳(いんでん)

  • 印傳は鹿革に漆で模様を施した伝統工芸品です 
  • 財布や名刺入れ、カードケースとして多用途に使われています

印傳は、単なる「小物入れ」という実用的な役割を超え、鹿革に漆で模様を施した独自の美しさが、着物や帯、羽織といった主要なアイテムの魅力をさらに引き立て、全体のコーディネートに深みと格調をもたらす重要な「アクセント」となるでしょう。

特に、漆の色や柄の選び方次第で、季節感や着用シーンに合わせた微妙なニュアンスを表現することが可能になり、着る人の個性やセンスをさりげなくアピールする役割も果たします。

印傳の山本:合財袋
印傳の山本:合財袋

有限会社 印傳の山本

以上、ご紹介した実用小物は、機能面だけでなく、着物姿にこだわる大人の“たしなみ”を感じさせる要素です。必要最小限の荷物をスマートに持ち歩きつつ、和装全体の雰囲気を引き立て粋に着こなす必須アイテムとして、積極的に取り入れてほしいと思います。

 

6. 装飾小物 – 個性を演出するアイテム

和装は一見シンプルに見えて、実は小物使いで大きく印象が変わる奥深い世界です。特に「装飾小物」は、機能性以上に“おしゃれ”や“個性”を引き出すための重要な要素。

着物そのものが控えめなスタイルであることが多い男性にとって、これらの小物は絶好の自己表現の手段ともいえます。

6-1. 扇子(せんす) – 実用と格式の象徴

扇子は、風を送るための道具としての実用性に加え、着物姿を引き立てる伝統的なアクセントアイテムです。袂(たもと)や帯にさりげなく差しておくことで、落ち着いた上品さを演出できます。

特徴と選び方:

  • 紙扇子(かみせんす):普段使いや夏祭りに最適
  • 木扇子(もくせんす):格式のある場面に使える高級感
  • 持ち運びしやすく、着席時の仕草にも品が出る
扇子
粋な男の必需品

6-2. 根付(ねつけ) – 小物に添える遊び心

根付は、もともと印籠や煙草入れなどを帯から吊るすために使われていた留め具のようなもので、現在では装飾用として人気があります。小さな彫刻や細工が施されたものが多く、粋なワンポイントとして注目されています。

ポイント:

  • 帯の間からちらりと見える“さりげなさ”が魅力
  • 動物や縁起物、家紋風など、モチーフは多彩
  • アクセサリー感覚で楽しめる男性向けの装飾

根付け
根付けは材質や作者で値段も大きく変わります

6-3. 季節感を取り入れる工夫

装飾小物は、季節感をさりげなく表現するのにもぴったりです。たとえば、夏には竹製の扇子や風鈴の根付、秋には紅葉モチーフの帯留めなど、四季折々のモチーフを取り入れることで、粋な和の心を感じさせることができます。

こうした装飾小物は、ただの「飾り」ではなく、和装をより豊かに、そして自分らしく見せるための大切な要素です。あくまで“やりすぎずに、さりげなく”。その美意識こそが、日本の男着物ならではの魅力です。

おわりに

男の着物は、一見するとシンプルで無駄のない装いに見えますが、実はその奥には多くの小物が支えとなり、完成された美しさと快適さを生み出しています。

肌着から帯、履物、実用小物、装飾小物に至るまで、それぞれに意味と役割があり、それらが調和してこそ“粋な和装”が成立します。

特に、現代の男性が着物を楽しむうえで重要なのは、形式に縛られすぎず、TPOに合わせて自分らしいスタイルを築くことです。最初からすべて揃える必要はありません。

まずは襦袢や角帯、足袋などの基本小物から始め、少しずつ羽織紐や巾着、根付などを取り入れていくことで、自然と和装への理解と愛着が深まっていきます。

また、ゆっくりと学びながら良い出会いを待ってこそ、一生ものと出会える機会も巡ってくるものです。

そして何より、小物使いを楽しむことは、着物の着こなしに“自分らしさ”を加える最大の手段です。たとえ同じ着物でも、帯の締め方や羽織紐の選び方、小物のコーディネート次第でまったく異なる印象になります。

ぜひ今回ご紹介した小物たちをヒントに、あなただけの男着物スタイルを見つけてみてください。日常の中に和の装いを取り入れることで、時間の流れが少しだけ丁寧に、そして豊かに感じられることでしょう。

参考文献:全日本きもの振興会きもの文化検定公式教本I きものの基本 株)ハースト婦人画報社

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